責任準備金(読み)セキニンジュンビキン

デジタル大辞泉 「責任準備金」の意味・読み・例文・類語

せきにん‐じゅんびきん【責任準備金】

保険会社保険契約上の支払いの責任を履行するために必要な資金として準備する積立金

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精選版 日本国語大辞典 「責任準備金」の意味・読み・例文・類語

せきにんじゅんび‐きん【責任準備金】

  1. 〘 名詞 〙 保険会社が保険契約者に対して、保険金支払の責任を果たすために準備する積立金。責任準備。責任積立。〔新しき用語の泉(1921)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「責任準備金」の意味・わかりやすい解説

責任準備金 (せきにんじゅんびきん)

保険会社が,保険契約に基づく将来の保険金や解約払戻金支払の責任を完全に果たすことができるように保険料の中から積み立てる金額。生命保険ではpolicy reserve,損害保険ではunderwriting reserveという。保険業法(88条)および同施行規則によって積み立てることが規定されている。

生命保険の保険料は保険金支払の財源となる純保険料と諸経費支出の財源となる付加保険料から構成されている。純保険料のうち満期保険金支払の財源となる部分は,満期まで支払の必要がないから満期の際の支払にそなえて積み立てておかなければならない。また死亡保険金支払の財源となる部分も,保険期間の初期においては死亡率が低く,年を経るにしたがって死亡率が逓増するから後年の死亡にそなえて積み立てておかなければならない。これらの積み立てておかなければならない金額が生命保険における責任準備金である。

 生命保険の責任準備金の積立方式には種々の方式があるが,おもな積立方式は次の二つである。

(1)純保険料式 会社の経費は,年々一定額の付加保険料だけで賄うたてまえのもので,事業費のことはいっさい考慮に入れずに純保険料と保険金支払との収支だけで責任準備金を計算する方式である。

(2)チルメル式 契約成立の最初の年度は,医師の診査費用,外務員の経費,保険証券の作成費などの経費が一度にかかるのに,付加保険料は払込期間を通じて毎年均等という仮定のもとに計算されているため,契約の初年度の付加保険料では足りなくなるが,その不足部分を純保険料から借りて,借りた部分をそれ以降の付加保険料収入で償却(返済)していく方式で,この方式を考案したドイツの数学者チルメルAugust Zillmer(1831-93)の名前をとって〈チルメル式責任準備金〉と呼ばれている。

 なお生命保険の責任準備金には,保険料積立金未経過保険料準備金,さらに保険種類によっては危険準備金が含まれる。
執筆者:

これは普通責任準備金と異常危険準備金に大別される。普通責任準備金は,決算期末に保険期間が終了していない保険契約の保険料のうち未経過期間に対応する未経過保険料と,初年度収支残(当年度に収入した保険料からその契約の保険金,事業費を控除した額)のいずれか大きいほうを保険種目ごとに積み立てるものである。ただし自動車損害賠償責任保険,地震保険,長期積立型の保険については,それぞれの種目の特性に応じた責任準備金の積立方法が定められている。異常危険準備金は巨大災害等に備えて積み立てられるものであり,特定保険種目または保険種目群の損害率が一定率を超えると取り崩されるという仕組みを通じて損害保険事業の経営の安定に役立っている。
執筆者:

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保険基礎用語集 「責任準備金」の解説

責任準備金(保険)

保険契約上の責任である保険金などの支払いを確実に行うために、保険会社が保険料の中から準備しておく積立金を指します。責任準備金は、預貯金などとは異なり契約者全体の共同準備財産です。保険料を構成する純保険料部分のうち、その年の死亡保険金の支払いに使用した残額については、将来の死亡および満期保険金支払いのために準備すべき金額になります。つまり、契約上の債務である責任を将来果たすために準備すべき金額です。保険料は収支相当の原則に従って、保険期間平均的に支払われが、死亡率を考えるとその保険期間が長くなるほど、保険期間の終わりに近づくにつれて支払う死亡保険金は大きくなります。また、養老保険のように満期時に満期保険金がある保険種類については、生存してる場合は確実に満期保険金の財源となる資金は残しておくことが必要であります。この残しておくべき金額の累積額が責任準備金です。

責任準備金

保険会社は、保険契約上の危険負担責任を確実に果たすために、諸準備金を積立てているが、その中核的な役割を担っているものとして、保険業法第116条の規定により、積立てが義務づけられている責任準備金があります。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「責任準備金」の意味・わかりやすい解説

責任準備金
せきにんじゅんびきん
policy reserve; premium reserve

保険会社が保険金の支払責任を果すために収入保険料の一定割合を積立てておくもので,保険会社特有の法定義務積立金の一つである。損害保険の場合は将来発生する保険事故にそなえるための未経過保険料準備金と,通常予測されない大火や台風による災害などの際の保険事故にそなえる異常危険準備金とから成る。生命保険の場合は保険料積立金と未経過保険料から成り,さらに保険種目によっては危険準備金を加えて積立てられる。保険会社は保険事故の発生に対して円滑に保険金を支払わなければならないため,その運営の健全をはかるため保険業法 88条により諸種の積立金を強制されている。

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損害保険用語集 「責任準備金」の解説

責任準備金

将来の保険金支払に備えて、予め積立てておく準備金をいいます。これには、次年度以降の保険金支払に対応する保険料を積立てる『普通責任準備金』と、積立保険において満期返戻金・契約者配当金の支払にそなえるための『払戻積立金』『契約者配当準備金』、異常な大災害に備える為の『異常危険準備金』などがあります。

出典 自動車保険・医療保険のソニー損保損害保険用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の責任準備金の言及

【年金財政方式】より

…一般に拠出原則に基づく年金制度では,一定期間の保険料拠出が年金受給権取得のための条件の一つとなっている。そのため,年金制度の給付費は制度発足当初においてはほとんどなく,時間の経過とともにしだいに増加し,数十年という歳月を経過した後に,はじめて給付費の実質的な大きさが一定水準で推移することとなる。このように,時間的に大きく変化する給付費を賄っていくための財源を,どのような考え方で調達していくかという計画のことを,年金制度の財政方式と呼んでいる。…

※「責任準備金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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