保険契約においては、契約の一方の当事者である保険者が危険負担という給付を行うのに対して、他方の当事者である保険契約者は保険者にその報酬(反対給付)を支払うが、この報酬を保険料という。保険料(営業保険料)は純保険料と付加保険料とからなり、前者は保険給付(保険金)の支払いにあてられ、後者はその主要部分が保険者の人件費、物件費などの営業費の支払いにあてられる。純保険料は、生命保険においては死亡率、予定利率をおもな要素として各年齢別に算出される。ただ、1年ごとの純保険料を計算した場合、契約者の保険料負担は死亡率の上昇に伴って年々高くなり、高齢になると禁止的な高料率となる。これを自然保険料というが、このように保険料が年々高くなることは、長期の生命保険契約に対しては実際的でないところから、自然保険料の総額を全保険年度に均等に割り当てることが行われる。この平均化された保険料を平準保険料という。これに対して損害保険では、各対象物件の危険度に対応して純保険料が算定されている。ただ、損害保険においては、事故発生の頻度が生命保険の場合のように平均化しておらず、その損害率は不安定である。このため損害保険では、保険料率が適正であるか否かを判断することがなかなか困難であるが、この料率を自由競争にゆだねておけば、保険会社間の競争で不当に低下し、保険経営を危うくすることにもなりかねない。このため、従来、日本の損害保険市場においては、保険種目によって、「損害保険料率算出団体に関する法律」(料率団体法)により損害保険料率算定会および自動車保険料率算定会が算定して各保険会社に対し拘束力をもつ算定会料率(火災保険、自動車保険など)、各保険会社間で協定される協定料率(航空保険など)、および各社が適当に決定しうる自由料率(貨物保険など)の三つが併存していた。しかし、1998年(平成10)に料率団体法が改正され、次のように改められた。料率団体法に基づく料率団体には、火災・地震・傷害保険の料率算出を行う損害保険料率算定会と自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)・自動車保険の料率算出を行う自動車保険料率算定会があるが、両団体が算出する保険料率に至っては会員の使用義務は廃止された。なお、料率団体が算出する保険料率には、参考純率と基準料率の2種類がある。前者は、純保険料率にのみかかわるもので、会員が自社の保険料率を算出する際に基礎としうるものであり、参考純率を算出する対象保険種類は火災・傷害・自動車・医療費用・介護費用保険である。後者は、純保険料率のみならず付加保険料率をも含むもので、基準料率を算出する対象保険種類は自賠責・地震保険である。なお、2002年7月に両団体は統合し損害保険料率算出機構となり、現在は同機構が保険料率の算出を行っている。
[金子卓治・坂口光男]
保険契約者が保険者の給付に対して支払う代償(反対給付)。生命保険では,(1)被保険者が将来,死亡したときや満期のときに支払われる保険金の財源になる部分(この部分を純保険料という)と(2)保険制度を維持するための費用の部分(付加保険料という)とで組み立てられている。純保険料はさらに,死亡保険金の支払の財源になる部分(死亡保険料または危険保険料という)と満期保険金の財源となる部分(生存保険料または貯蓄保険料という)に分かれる。
保険料は,契約の全期間を通算して契約者の負担する保険料総額とその運用利息との合計額(保険者の収入)が,支払われる保険金と事業費の合計額(保険者の支出)に等しくなるように計算される(収支相等の原則)。したがって純保険料は,危険の発生の確率(予定死亡率)と収入した保険料を運用する利率(予定利率)をあらかじめ見積もり,収支相等になるように計算され,一方付加保険料は必要な事業費(予定事業費率)を見込んで計算される。このように純保険料は死亡率を基礎にしており,その死亡率は年齢が高くなるにともなって高くなるため,保険料は所得が低減していく高齢者ほど高くなり,現実的でなくなる。そこで保険期間中の保険料を毎年同額にする方法が考案され,一般に用いられている。年齢別の死亡率による1年ごとの保険料を自然保険料といい,毎年同額に平準化された保険料を平準保険料という。なお純保険料に付加保険料を加えた保険料を営業保険料という。
損害保険料においても,支払保険金にあてられる純保険料と事業費にあてられる付加保険料とで営業保険料が構成されている。料率には,保険種目によって損害保険料率算定会および自動車保険料率算定会が団体加入の保険会社に統計資料を提出させて算出し,共同で使用する料率(火災保険,自動車保険等)と,各社が算出した料率(船舶保険等)がある。なお,1998年の保険制度改革により,損害保険料率が自由化された。
社会保険では各保険の財源は,一般に被保険者本人,事業主,国庫負担から成っている。保険料は賦課方式と積立方式に大別される。前者は,その年度の収入は,当該年度に必要な支出に等しくなるように計算される保険料である。後者は収支相等の原則に基づき事前に完全積立てができるように計算される保険料であるが,日本の実態では,国民の負担能力等から賦課方式と完全積立方式の中間的な修正積立方式による保険料が適用されている。
執筆者:松田 喜義
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…また,被保険者は約1554万人,被扶養者約1651万人である。 保険者は保険料を徴収するとともに保険給付を行う。保険料は,第1級9万2000円から第40級98万円までの等級に分類された標準報酬に保険料率を掛けた額が徴収される。…
…保険契約者と被保険者は同一人の場合が多い。 保険者は,所定の事故が発生した際に保険金を支払う義務を保険契約者に負っているが,これに対応して保険契約者は,保険料を支払う義務を負う。保険契約にもとづいて,保険者から保険金を受け取る人を保険金受取人と呼ぶが,生命保険の場合は,契約者自身が受取人のことも,被保険者が受取人のこともあり,ときには第三者が受取人となることもある。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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