資本の商品化(読み)しほんのしょうひんか(英語表記)capital as a commodity
Kapital als Ware[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「資本の商品化」の意味・わかりやすい解説

資本の商品化 (しほんのしょうひんか)
capital as a commodity
Kapital als Ware[ドイツ]

資本の商品化とは,建物や機械などの企業資産そのものが売却されることではなく,そうした現実資本に対する出資持分(株式)が価格を与えられて売買される関係をいう。

 株式会社の資本は払い込まれると同時に,現実的な機能資本と擬制的な株式資本という,二重の存在を与えられる。株券に具体化される後者の資本は,機械や原料として機能する現実資本の運動とは別に,配当を生む特殊な商品とみなされて証券市場で売買されるのである。こうした株式資本としての資本の商品化は,たんなる類推幻想によるものではない。すでに投下した現実資本がいつでも部分的に他人の所有におきかえられうるという資本の動化Mobilisierung des Kapitalsと,資本市場と貨幣市場の間における資金の交流とにもとづく,株式価格の形成機構を現実的な根拠にしているからである。

 出資者は株式(証券)を自由に分割譲渡することによって昨日出資した資本を今日にも回収できるようになり,そこで短期の遊休資金も資本市場における株式の利回り貨幣市場における利子率とを比較しつつ両市場の間を流出入するという機構が成立する。それゆえ株式価格に対する配当の比率としての利回りは,この機構によってたえず利子率に均等化する傾向をもつことになる。

 ここから〈貨幣-利子〉の関係が〈株式-配当〉の関係に投影されて,自己資本の他人資本化および配当の利子化といった現象が生ずるのである。ところが通常は逆に理解され,利子を生むことを資本の本性とみなすという倒錯した観念(資本利子説)を生み出すことになった。それは株式の流動化によって資本の商品化という観念が社会的に一般化したことにもとづいている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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