道草(読み)ミチクサ

デジタル大辞泉 「道草」の意味・読み・例文・類語

みち‐くさ【道草】

[名](スル)
道ばたに生えている草。
目的の所へ行き着く途中で、他の物事にかかわって時間を費やすこと。「お使い帰りに道草する」
[類語](2道すがら道中道道みちみち途中途上途次中途行き掛け路次通りすがり通り掛かり通り掛け行きずり行き掛かり帰りしな帰りぎわ帰り掛け帰るさ寄り道半ばついでついでにちなみに念のため手ついでがてらかたがたかたわら

みちくさ【道草】[書名]

夏目漱石小説。大正4年(1915)発表。大学教授である主人公健三が、世俗的社会に束縛され、孤独に生きるさまを描いた自伝的作品

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精選版 日本国語大辞典 「道草」の意味・読み・例文・類語

みち‐くさ【道草】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 道ばたに生えている草。
      1. [初出の実例]「道草の花のさかりやのちの旅〈風六〉」(出典:俳諧・水の友(1724)乾)
    2. ( ━する ) 道草を食うこと。
      1. [初出の実例]「行人の道くさと成花野哉〈梅盛〉」(出典:俳諧・毛吹草(1638)六)
    3. 植物あぶらがや(油茅)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
  2. [ 2 ] 小説。夏目漱石作。大正四年(一九一五)発表。索漠とした健三、お住夫婦の生活を中心にその一家の間で起こる心理的トラブル、複雑な家庭生活の事情を反映した苦悩を描く。作者唯一の自伝的小説。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「道草」の意味・わかりやすい解説

道草
みちくさ

夏目漱石(そうせき)の長編小説。1915年(大正4)6月3日から9月10日まで、東京・大阪の『朝日新聞』に連載。同年10月、岩波書店刊。留学から帰国した健三は社交を避けて、研究の完成に心血を注ぐ。しかし、夫の手前勝手を責める妻お住のヒステリーに悩み、再会した昔の養父島田や小市民の暮らしにあえぐ兄夫婦など、恩愛と義理の絆(きずな)に縛られた心労も多い。島田とのトラブルは金銭で解決したが、世の中になにひとつかたづくもののないことを健三は知っていた。『吾輩(わがはい)は猫である』執筆前後の時期を描いた作品で、さまざまな煩労の解決を強いられた神経衰弱の日々が、執筆時の覚めた認識と合せ鏡にして回想される。愛と自己本位の葛藤(かっとう)、知識人の孤独など年来の主題が実生活を糧(かて)として検証され、日常生活の実感を彷彿(ほうふつ)する簡潔な描写が、その奥に潜む危機を暗示する傑作

三好行雄

『『道草』(岩波文庫・旺文社文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫)』『桶谷秀昭著『夏目漱石論』(1972・河出書房新社)』

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とっさの日本語便利帳 「道草」の解説

『道草』

夏目漱石
健三が遠い所から帰って来て駒込の奥に所帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋し味さえ感じた。\(一九一五)

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旺文社日本史事典 三訂版 「道草」の解説

道草
みちくさ

大正時代,夏目漱石の小説
1915年刊。作者の自伝的作品。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「道草」の解説

道草 (ミチクサ)

植物。カヤツリグサ科の多年草。アブラガヤの別称

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世界大百科事典(旧版)内の道草の言及

【夏目漱石】より

…このことを〈彼は暗い櫺子(れんじ)のうちで転げ廻った。惣身(そうしん)の肉を所嫌はず搔き挘(むし)って泣き叫んだ〉と《道草》に記している。孤独な幼年時代の記憶は暗い色調に覆われている。…

※「道草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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