略称STM。試料表面に鋭くとがった針を1000分の1マイクロメートル以下に近づけて、針と試料の間に流れるトンネル電流が一定になるようにし、原子レベルの極微な位置情報を電気的または機械・光学的に取り出し、コンピュータ処理により立体像をつくる顕微鏡。プローブ(針)は圧電素子で駆動され、電圧により上下左右に微細に走査できる。金属表面に吸着された原子や分子、高温超伝導体や半導体結晶の表面構造、DNAの二重螺旋(らせん)、ウイルスの構造などの観察が可能である。
針のかわりに微細なカンチレバーを利用した原子間力顕微鏡(AFM)は絶縁物表面や高分子材料の構造のほか、吸着力や摩擦力、磁力などの観察が可能である。また、観察対象に応じたプローブによってフォトンSTM(PSTM)、トンネル音響顕微鏡(TAM)、走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)などが開発され、STMとともにナノテクノロジーの主要機器を構成している。
[岩田倫典]
『西川治編著『走査型プローブ顕微鏡』(1998・丸善)』
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STMともいう.金属探針と導電性試料の間に弱い電圧をかけながら,探針を接近させるとトンネル電流が流れる.この電流は両者の距離の変化に敏感で,0.1 nm 程度の変化で1けた近く変化する.したがって,トンネル電流を一定に保ちながら試料表面を走査すると,試料表面の凹凸を原子の尺度でなぞることができる.この原理を応用した顕微鏡.なお,トンネル電流のかわりに,探針と物質表面の間にはたらく反発力を一定に保ちながら表面を走査し,画像を得るのが原子間力顕微鏡である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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