走査型トンネル顕微鏡(読み)そうさがたとんねるけんびきょう(英語表記)scanning tunnelling electron microscope

日本大百科全書(ニッポニカ)「走査型トンネル顕微鏡」の解説

走査型トンネル顕微鏡
そうさがたとんねるけんびきょう
scanning tunnelling electron microscope

略称STM。試料表面に鋭くとがった針を1000分の1マイクロメートル以下に近づけて、針と試料の間に流れるトンネル電流一定になるようにし、原子レベルの極微な位置情報を電気的または機械・光学的に取り出し、コンピュータ処理により立体像をつくる顕微鏡プローブ(針)は圧電素子で駆動され、電圧により上下左右に微細に走査できる。金属表面に吸着された原子や分子、高温超伝導体や半導体結晶の表面構造、DNAの二重螺旋(らせん)、ウイルスの構造などの観察が可能である。

 針のかわりに微細なカンチレバーを利用した原子間力顕微鏡(AFM)は絶縁物表面や高分子材料の構造のほか、吸着力や摩擦力、磁力などの観察が可能である。また、観察対象に応じたプローブによってフォトンSTM(PSTM)、トンネル音響顕微鏡(TAM)、走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)などが開発され、STMとともにナノテクノロジーの主要機器を構成している。

[岩田倫典]

『西川治編著『走査型プローブ顕微鏡』(1998・丸善)』

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百科事典マイペディア「走査型トンネル顕微鏡」の解説

走査型トンネル顕微鏡【そうさがたトンネルけんびきょう】

微小なきわめて細い金属針の先端を物質表面に近づけたとき,トンネル効果によって流れる電流を測定することにより,試料表面の形状を原子スケールの精度で観測する顕微鏡。金属針先端を圧電素子を用いた微細駆動装置によって動かし,物質表面をなぞるようにしてトンネル電流が一定になる位置を走査していくことで,表面形状の立体画像が得られる。1原子程度の凹凸まで観察でき,表面科学の研究を画期的に進展させた。半導体や金属表面の観察をはじめ,有機材料から生体分子の研究まで幅広い分野で利用されている。IBMチューリヒ研究所のG.ビニッヒとH.ローラーが1980年代初頭に発明,この功績により両者は1986年にノーベル物理学賞を受賞。
→関連項目STM

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化学辞典 第2版「走査型トンネル顕微鏡」の解説

走査型トンネル顕微鏡
ソウサガタトンネルケンビキョウ
scanning tunneling microscope

STMともいう.金属探針と導電性試料の間に弱い電圧をかけながら,探針を接近させるとトンネル電流が流れる.この電流は両者の距離の変化に敏感で,0.1 nm 程度の変化で1けた近く変化する.したがって,トンネル電流を一定に保ちながら試料表面を走査すると,試料表面の凹凸を原子の尺度でなぞることができる.この原理を応用した顕微鏡.なお,トンネル電流のかわりに,探針と物質表面の間にはたらく反発力を一定に保ちながら表面を走査し,画像を得るのが原子間力顕微鏡である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

デジタル大辞泉「走査型トンネル顕微鏡」の解説

そうさがたトンネル‐けんびきょう〔‐ケンビキヤウ〕【走査型トンネル顕微鏡】

鋭くとがった探針(プローブ)を試料表面に近づけ、そこに流れる微弱なトンネル電流を利用し、原子レベルで試料表面の立体構造を観察できる顕微鏡。試料は導電性のものに限られる。走査型プローブ顕微鏡の一。1982年にドイツのG=ビーニッヒスイスのH=ローラーにより発明され、二人はこの功績により1986年にノーベル物理学賞を受賞。STM(scanning tunneling microscope)。

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