嫁入り婚の一つの方式で、形からいうと婿入り婚に近い。現在嫁入り婚とよばれているものは、嫁が夫のもとに移り、夫の家で生活が行われるものであるが、足入れというのは、最初婚姻の行われるのは嫁方で、以後嫁の引き移りまでの間、夫が妻のもとへ通う様式がとられている。この期間は婿入り婚的な形をとり、ある期間を経て、妻は夫の家に移る。つまり婚姻の成立と、嫁の引き移りとの間に、ある程度年月があるのであって、このなかには伊豆の島々のように、嫁は主婦となる日、すなわち夫の母が亡くなってから、家の主婦として引き移るという習わしもあった。
現在アシイレとよばれる結婚はほとんどなくなっているが、しかし老年の婦人のなかにはアシイレで嫁にきたと語る人も多い。その場合、いささかの躊躇(ちゅうちょ)もなく語るのは、どこでもごくありふれた方式であったためであろう。アシイレのほかデイリソメ(出入り初め)、アユミソメなどの名称もあり、またハシトリ(箸トリ)、一晩ドマリなどともいうが、これらのなかには夫と妻との年回りとか、忌中であるとか、または経済的理由もあって披露の宴を延期したり、簡略にする場合もあった。なかには試験婚のような形で嫁を引き取る例もあって、世間の指弾を浴びることもあった。
[丸山久子]
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