軟化病(読み)ナンカビョウ(英語表記)flacherie

デジタル大辞泉 「軟化病」の意味・読み・例文・類語

なんか‐びょう〔ナンクワビヤウ〕【軟化病】

蚕の体が軟弱になって死ぬ病気起縮おきちぢみ病・卒倒たれこ病など。細菌ウイルスによって起こる。

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精選版 日本国語大辞典 「軟化病」の意味・読み・例文・類語

なんか‐びょう ナンクヮビャウ【軟化病】

〘名〙 蚕の身体が軟弱になって死ぬ病気の総称消化管または血液中に細菌が繁殖して起こる。

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改訂新版 世界大百科事典 「軟化病」の意味・わかりやすい解説

軟化病 (なんかびょう)
flacherie

原因はいろいろあるが,共通の病徴として食欲不振,体の緊張の欠如,発育不良,体の縮小下痢死体の黒変軟化などを示すカイコの病気の総称。カイコに給与するクワの質が悪かったり,飼育中の温湿度などの環境条件が不良であったりしてカイコの生理機能が低下すると,健康な場合に腸内に共生し一定数に維持されていた細菌のうち,おもに連鎖球菌Streptococcusなどの球菌類が異常繁殖する。これが軟化病発生の最も一般的な原因である。その結果カイコは中腸が侵されて消化不良となり,下痢などを伴って発病・致死する。軟化病の発生は春蚕期には少ないが,夏,初秋および晩秋蚕期に多く,いずれもおもに4~5齢の壮蚕期に発生する。この種の軟化病の発生に対しては,飼育中の環境諸条件を適切にし,不良環境に耐える強健性品種を飼育するなどして予防に努めることが必要である。このほかカイコの皮膚に小さな傷があると,そこから細菌が体内に侵入し繁殖するために起こる敗血症も軟化病の一種である。また軟化病はカイコの中腸に感染するウイルスに原因して起こる場合もある。例えば,細胞質多角体病ウイルスや伝染性軟化病ウイルスが中腸に感染し生理機能が低下すると,それが引金になって腸内細菌の異常繁殖をもたらし,カイコは軟化病の症状を呈する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軟化病」の意味・わかりやすい解説

軟化病
なんかびょう
flacherie

蚕の病気の代表的な一つ。普通,斃死蚕が軟化腐乱することからこういわれる。一般に春蚕より夏,秋,晩秋蚕に罹病率が高い。その病源によって伝染性軟化病 (F型) ,細胞質 (中腸型) 多角体病,細菌性消化器病,卒倒病,敗血症に,また病状によって空頭性,下痢性,縮小性,吐瀉性などに区別される。細菌性消化器病では連鎖状球菌,大腸菌類似菌,変形菌類似菌,その他の細菌が病蚕の消食管にみられる。伝染性軟化病と細胞質多角体病はウイルスを病源としており,膿病とともにウイルス病として扱われるようになった。

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