農薬ポジティブリスト制度(読み)のうやくぽじてぃぶりすとせいど

知恵蔵 の解説

農薬ポジティブリスト制度

2003年5月の食品衛生法の改正によって導入された、すべての食品の残留農薬を規制する制度で、基準値の範囲内で使用できる農薬をリストアップし、それ以外の農薬については使用を禁止する。06年5月29日から施行旧来の制度は基準値以上の残留を禁止する農薬を作物ごとに示すネガティブリスト制。世界には数多くの農薬があるにもかかわらず、基準値の設定されている農薬は05年7月現在でわずか249種類に過ぎず、それ以外の農薬については自由な使用が認められていた。ネガティブリストからポジティブリストへの移行は、食品の安全性に強い関心を持つ消費者の要望に応えたものである。ポジティブリスト制度では、原則として0.01ppmの一律基準を設けた上で、安全性審査をクリアーした農薬については作物ごとに残留農薬基準を定め、5年ごとに見直しを行う。加工品も対象。違反した場合には販売停止・回収義務が生じる。06年6月5日に中国産エンドウで制度導入後最初の一律基準違反が発生し、輸入元に回収・販売禁止命令が出された。07年にも中国、米国ベトナムなどからの輸入食品に食品衛生法違反が続出し、特に中国産野菜の輸入量が大きく減少している。出荷団体、輸入商社、加工品メーカーは同法違反のリスク防止のために栽培履歴の徹底と残留検査の強化を進めている。一方、日本の農業者にとっても、一律基準違反とならないように近隣作物への飛散防止が重要な課題となっている。

(池上甲一 近畿大学農学部教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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