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逆ユートピア ぎゃくユートピアdystopia

翻訳|dystopia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

逆ユートピア
ぎゃくユートピア
dystopia

ユートピアに対置される概念。現代の問題点が解決されないまま放置されると近未来はどうなるかという関心から多くの作品が生まれた。 A.L.ハクスリーの『すばらしい新世界』 (1932) や G.オーウェルの『1984年』 (48) などが代表的な小説としてあげられる。それらに共通するのは人間解放を約束したはずの科学技術がその肥大化によって逆説的にも巨大な管理社会を生み出すという悲観的な未来像を透視している点である。目に見えない独裁者の支配,怪物的な官僚制システム,性愛のコントロールなど多様な素材を活用しながら自由の抑圧という主題を批判的に展開している。科学技術と自由の関係が 20世紀前半の逆ユートピア小説の提起した問題であった。これに対して現代では M.アトウッドの『侍女の物語』 (85) のように宗教的原理主義者たちが支配する全体主義的国家の抑圧をフェミニズムの視点から問題化する小説も現れている。いずれにせよ逆ユートピアの構想は近未来小説の形式で展開されながらも,その底流にはシニカルな現実批判の視線が貫徹されていることを忘れてはならない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

逆ユートピア
ぎゃくゆーとぴあ
dystopia

ユートピアが「ここにないところ」という原意から「理想社会」をさすのに対して、逆ユートピアは、その反対語(anti-utopiaということばも存在する)であり、否定的に描かれたユートピアを意味する。ディストピアともいう。トマス・モアの『ユートピア』(1516)やウィリアム・モリスの『ユートピアだより』(1890)がバラ色の「理想社会」を描くのに対して、逆ユートピアの先駆とされるサミュエル・バトラーの『エレホン』(1872)では、機械が意識を有し、人間を奴隷にしてしまう。
 このように、とくに近代の産業革命以後の機械文明の発達に対して、その否定的、反人間的な側面を強調して描き出された「未来社会」像のことを逆ユートピアという。オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』(1932)やジョージ・オーウェルの『一九八四年』(1949)で描かれた世界は、現代文明に対する逆ユートピアの典型であり、楽観的な技術至上主義への反省を促すものである。[田中義久]
『ハックスリー著、松村達雄訳『すばらしい新世界』(講談社文庫) ▽オーウェル著、新庄哲夫訳『一九八四年』(ハヤカワ文庫)』

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