日本大百科全書(ニッポニカ) 「連邦航空局」の意味・わかりやすい解説
連邦航空局
れんぽうこうくうきょく
Federal Aviation Administration
航空輸送の安全維持・確保を図るためのアメリカの政府機関。略称FAA。本部をワシントンDCに置く。1956年にグランド・キャニオン上空で起きた航空機衝突事故(死者128人)を契機に、1958年制定の連邦航空法に基づいて設立された。1967年にアメリカ運輸省が設立されると、その下部機関となった。民間航空機の設計、製造、整備、修理の審査・検査を担当する。民間航空機の量産に先だち、主翼やエンジンなど機体の部材・部品が安全・環境基準に適合しているかどうかを審査して型式証明を交付する。FAAの型式証明は世界の多くの国で通用するため、完成機を量産する場合、FAAの型式証明の取得が必須(ひっす)となっている。
2013年(平成25)に日本航空(JAL(ジャル))と全日本空輸(ANA)のボーイング787型機で発生した電池発煙事故の際には、ボーイング787型機に34年ぶりに運航停止命令を出した。航空輸送の安全性を確保するための航空規定づくりに取り組んでおり、2015年には小型無人機ドローンの登録制を導入した。空港の整備・維持の監督、民間機と軍用機が安全・効率的に運航するための航空管制なども担当。たとえば2001年9月のアメリカ同時多発テロの際には、アメリカ国内および太平洋上空の民間航空機の飛行禁止命令を出した。このほか操縦士などの資格検定、乗員の訓練計画の審査業務も行うほか、民間航空機の騒音や環境対策の推進、民間航空技術の開発支援、航空宇宙システムの開発支援などの業務も担っている。なお航空機事故の調査は独立機関の国家運輸安全委員会(NTSB:National Transportation Safety Board)の担当であるが、FAAも航空輸送の安全性確保のため、調査に立ち会うケースが多い。
[矢野 武 2017年2月16日]