改訂新版 世界大百科事典 「運搬管理」の意味・わかりやすい解説
運搬管理 (うんぱんかんり)
運搬とは一般に工場や事業所内での資材の移動を意味してきたが,運搬管理では資材の移動だけでなく積み降ろしなどの荷役,運搬用の包装,貯蔵などを含めて,工場や事業所内外での一貫した資材の取扱いを総合的に管理する。このような見方に立つ技術や管理方式はマテリアルズ・ハンドリングmaterials handlingと呼ばれ,1930年ごろアメリカに起こった。それは単位荷物の方式(ユニットロード・システム)という考え方と自載運搬設備(セルフローディング・マシン)の開発が動機となっている。この単位荷物の方式とは,初めに資材を入れた箱を一定の形に積み重ねるなどして資材取扱いの単位をつくり,以降その単位を崩さずそのまま移動,荷役,貯蔵などをしようとする方式である。そのために単位荷物をパレットに載せておき,これを例えばフォークリフト・トラックのように車両自体が自分に単位荷物のまま積み込む形をとる自載運搬設備が開発された。この方法による運搬を単位運搬(ユニット・ハンドリング)と呼んでいる。また,これとは別にH.フォードによって,自動車製造における部品規格化,作業専門化などを基にした作業工程間のコンベヤによる資材機械搬送いわゆるフォード・システムとかデトロイト・システムと呼ばれるコンベヤ・システムが提唱され,大量生産を可能にした。この方法による運搬を流れ系列運搬(フロー・ハンドリング)という。これら単位運搬と流れ系列運搬が運搬管理に技術的なよりどころを与えている。近来はコンピューターの発達と相まって,移動部分では単位運搬,流れ系列運搬を統合した作業工程間の自動搬送とその手配自動化,荷役部分では産業用ロボットによる資材の取付け・取外し,積替え,方向分岐などの作業と管理の自動化,貯蔵部分では高層の棚構造をもつ立体自動倉庫による資材の納入,保管,搬出の作業自動化と資材発注,在庫調整,作業工程への資材供給などの管理自動化を通して,運搬管理では一貫した運搬自動化と管理総合化が進められている。これによって,運搬機能の効率化を図るとともに全体の生産性向上に貢献し,また労働環境を改善し安全性を高めて人間性を尊重し,さらには管理システムの発展に寄与することを運搬管理は期待している。
執筆者:秋庭 雅夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報