輸送の開始または終了にともなう輸送手段への貨物の積込み,積卸し作業を総称して荷役といい,貨物輸送には必ず荷役作業が必要である。海上輸送には荷役が行われる場所に応じて港頭荷役,船内荷役などがあり,鉄道輸送では貨物駅における駅頭荷役が必要となる。またトラック輸送や倉庫においても荷役は不可欠である。
かつては荷役作業は主として人力に頼っていて多くの労働力を必要とし,貨物の重量,荷姿に応じた労働を必要とするため,重労働のひとつとみられていた。そのため,貨物輸送費に占める荷役費用の比重はきわめて高かった。いまでも高い費用が必要なことに変りはないが,物的流通の近代化の重要な一環として1950年代ころから荷役の“機械化”が促進され,荷役が人間労働に頼る比重は低下した。機械化は,フォークリフト,クレーンなどの荷役運搬機械を利用するだけにとどまらず,コンテナー化,パレット化などの輸送方式と一体化したり,コンピューターによる自動制御システムの導入などが行われるまでに至っている。海上輸送におけるコンテナー化は,荷役の合理化が目的で導入されたといわれるほどである。荷役の合理化が進めば単に費用の節約になるだけでなく,複数の輸送機関相互の間での積込み,積卸しが合理化され,輸送手段の合理的な組合せ輸送が可能になるという効果をもたらす。鉄道とトラック,航空機とトラックのような異なった輸送手段を組み合わせることによって,複合輸送co-ordinated transportがスムーズに行われるようになった。宅配貨物などにおける自動仕訳機の導入など,荷役に関連する物的流通関連機器の進歩も著しい。
執筆者:岡田 清
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貨物輸送の過程で、貨物の積み込み、積み付け、荷卸し、荷さばき、仕分けを内容とする貨物の処理作業の総称。荷役は鉄道、トラック(貨物自動車)、航空機などによる陸上荷役と、船舶による海上運送に伴う港湾荷役に大別され、港湾荷役はさらに埠頭(ふとう)外の港内で行われる沖荷役(船内荷役)と、埠頭・岸壁で行われる沿岸荷役とに分けられる。第二次世界大戦前の荷役は、ほとんどが人力に依存する「半獣類的作業」であったが、戦後は、各種荷役やコンテナの導入によって省力化と能率増進が進められ、荷役システムの合理化が図られた。しかし、港湾荷役には、いまなお人力への依存度がかなり大きい。
荷役労働者には通運・荷役業者の常用労働者と日雇労働者とがある。常用労働者は荷役作業の熟練労働者であるがために、必然的にフォークリフトやフォークリフト・トラックなどの荷役システムの操縦者へと変わり、残余の人力依存部分を日雇労働者が担当している。常用労働者については雇用関係も安定しており、労働条件も守られているが、日雇労働者については前時代的な要素が残存しているので、種々の保護規制が加えられている。たとえば、登録労働者を職業安定所を通じて雇用することを法制化した港湾労働法は、その代表的なものである。従来、荷役合理化の重点は個別荷役作業の機械化・能率化に置かれてきたが、現在では貨物をあらかじめ一定の標準的な重量もしくは容積にとりまとめ、途中でそれを取り崩すことなく一貫して機械力で荷役・輸送するような荷役のシステム化(ユニット・ロード・システム)が急速に推し進められている。
[鳥谷剛三]
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…港湾内で船と陸との間で行われる貨物の積卸作業全般をいう。船の停泊場所の関係から,船を沖合に停泊させ,はしけやパイプラインを利用して貨物の輸送を行う沖荷役と,船を岸壁などの陸岸に直接横付けして荷役を行う接岸荷役とに分けられ,沖荷役のうちはしけを使用する場合をはしけ荷役ということもある。また上屋(うわや)内,陸岸とはしけの間,陸上の車両,各種積卸場における積卸作業は沿岸荷役と呼ばれ,これには上屋・倉庫間の貨物の輸送,倉庫への搬入作業も含まれる。…
…船舶の貨物の揚卸しをする仕事で,港内停泊中の本船から貨物をはしけに(またはしけから本船に)移して運ぶ沖荷役と,岸壁や桟橋等で本船やはしけから貨物をトラックや荷さばき場に卸す(またはその逆方向に揚げる)沿岸荷役とがある。沖荷役を行う労働者を沖仲仕ともいう。…
…生産や物流の施設における,原材料や部品や製品など,あらゆる有形の物の移動(上げ下げおよび横移動),保管およびこれらに付随する取扱いを荷役運搬といい,これに用いられる機械を荷役運搬機械と総称する。船,貨車,トラックなどと埠頭(ふとう),倉庫,資材置場などとの間の荷の積卸しを荷役,生産や物流の施設の構内やこれに準ずる特定範囲内の荷の移動を運搬と呼び分けることもあるが,近代産業の様態においては,これらは別個の独立した行為としてではなく,一連の物の移動として考えたほうがよく,さらには保管の分野をも含めた総合的な荷役運搬という概念に基づいて物の取扱いを計画することが,生産・物流の合理化のうえで必要になってきた。…
※「荷役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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