過敏性腸管症候群ともいう。情緒的緊張やストレスに対して腸管が適応できず,腸管の緊張,運動および分泌などの機能障害を起こす疾患で,いわゆる心身症の一つ。症状は,不定の腹痛,腹部膨満感,下痢,便秘または下痢,便秘を繰り返す便通異常などであり,粘液の排出,腸内ガスによるガスの排出,頭が重い,疲れやすいなど,自律神経失調症や精神神経症状を訴えることもある。しかし,通常の検査では器質的病変を認めない。神経症的な性格と自律神経系の不安定な素地のある人に,食事因子,身体的因子,情緒的因子が作用して発症する。消化器疾患のなかで最も頻度の高いもので,胃腸病患者の50~70%を占める。診断は総合的診断による。治療は,生活指導,食事療法,心理療法,鎮痙剤・鎮静剤・精神安定剤などの対症療法による。
執筆者:朝倉 均
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…この種の下痢は腸内容が排出されれば下痢は消失する。 次に腸管運動機能異常による下痢がある(過敏性大腸症候群など)。これには,腸管の運動が亢進し腸内容の通過が早く水分が十分吸収されないために腸内水分が増加して起こるものや,腸運動が低下し腸内容が鬱滞(うつたい)し異常発酵によって腸管が刺激されて下痢を起こすものがある(蓄便性下痢)。…
…大腸ポリープもよくみられるが,癌化する危険のあるものが多いので重要な病気である。副交感神経系の緊張亢進による過敏性大腸症候群がきわめて多いが,粘液性下痢,便秘,腹痛などがみられるものの,重大な病気ではない。最近増加しつつある病気としては潰瘍性大腸炎,クローン病,大腸憩室症などがあるが,一方,腸結核,赤痢などは減少している。…
※「過敏性大腸症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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