精選版 日本国語大辞典 「心身症」の意味・読み・例文・類語
しんしん‐しょう ‥シャウ【心身症】
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「心身医学の新しい診療指針」(日本心身医学会教育研修委員会編、1991年)によると、心身症(
とくに、身体疾患の発症や経過に心身相関の機構(メカニズム)を介した心理社会的要因が強く関係し、その多くは心理社会的要因を治療の対象として扱うことが必要と考えられる病態です。基本的には心理社会的因子の影響を受けない病態は存在しないと考えられますが、とくにそれらの要因が強く影響していると考えられる身体疾患を心身症として扱います。そのため病名表記では、たとえば
心身症になりやすい疾患の発症には、それぞれの疾患特有の原因が考えられます。なかでもストレスは、その発症や持続、慢性化の要因のひとつとして考えられていて、生物学的にはストレスが脳に作用して身体の機能や免疫などに影響することによって、関連するとされています。よく知られている主要なストレスを、ライフスタイルに応じて表19にあげました。
それぞれの疾患に応じた症状が現れます。心身症になりやすい人には、不安や緊張の強い人、あまり感情を表に出さず、自分のことを表現するのが苦手な人(アレキシサイミア:
心身症を診断する特別な指標はありません。症状や疾患が発症したり悪化する前にストレスの関与が認められたり、仮説・想定したストレスを治療の対象として取り上げた場合に症状が改善していくことなどで診断しています。
基本的には、それぞれの疾患に応じた身体医学療法に、心理療法が併用されます。補助的に向精神薬が用いられることもあります。
一般的な身体医学療法では症状や疾患がコントロールできない、もしくは治らない時には、心身症を疑って専門医(心療内科)の診察を受けましょう。
石川 俊男
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
身体的疾患ではあるが,その発生に社会-心理的因子が強く関与していると考えられるものをいう。その代表的なものに胃・十二指腸潰瘍,過敏性大腸炎,喘息(ぜんそく),高血圧,蕁麻疹(じんましん)などがある。心身症は一つの独立した病名ではない。また,上述のような種々の疾患が必ずしも社会-心理的因子とはかかわりなしに生じる場合もあり,その場合には心身症には含まれない。社会-心理的因子がある個人に情動的な持続的緊張をもたらし,自律神経系などの機能異常を生じ,身体の特定部位に器質病理的な変化が起こった場合が心身症で,これらの疾患はストレスによって身体の生理的な平衡(ホメオスタシス)に変化をきたした結果発病したものであるので,その治療にあたっては身体的治療とならんで心理的な治療(心身医学的治療)が重視される。なお,発病に心理的因子が深くかかわっている機能的な身体疾患を心身症に含めることがある。それは心理的な条件づけが主要な発現機序となっている疾患で,たとえば皮膚搔痒(そうよう)症,呑気症,神経性嘔吐などのような器質病理的変化を欠いているものである。きわめて広義には,〈心身相関〉という観点から,身体的疾患が存在するところに二次的に心理的因子が加わって症状の消長を左右する場合や,身体症状を強く示す神経症およびうつ病までを心身症とすることもある。しかし,これらは本来の心身症ではない。
心身症の発現には上記の精神生理的な病態が問題となるが,患者のパーソナリティの特徴も一方では注目される。心身症の人は社会的には過度の適応を示すことが多い。つねに現実にいかに対処すべきかに真剣で,健康人のように心的緊張を他に転換するすべを知らない。他者からみると非常に現実的で活動的であるので,社会的には重視され,そのためますます本人には重圧がかかり,過度の適応が要求される状況となる。その結果,ますます情動的な緊張は高まり病変を生じやすくなるのである。
心身症の身体症状は臨床各科の領域にわたるので,治療は対象各科で行われる。日本では心療内科を標榜して,心身医学的治療を専門に行う医師もいる。実際の治療は心身両面から行われるのが原則で,病変部位への身体医学的処置(たとえば潰瘍治療剤などの投与)と心理療法を行う。前述のように性格傾向が病変の発生に強くかかわっているので,精神分析や交流分析などを通じ自己の性格傾向を洞察させる。また,具体的に生活指導を行ったり,不安・緊張を軽減するため抗不安薬を投与したり,自律訓練法,行動療法などを行う。なお,心身症とされる疾患は多種多様であるが,前述の代表例のほか,神経性狭心症,神経性無食欲症,肥満,糖尿病,円形脱毛症,湿疹,眼瞼痙攣(けいれん),月経困難症,無月経,周期性嘔吐症,その他がある。
→心身医学
執筆者:永島 正紀+野上 芳美
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精神的な影響を強く受ける疾患の総称。いずれも心身医学の対象となるもので、神経症の研究に始まり、現在では臨床各科の疾患に広く及んでいる。
診断は面接によって行われるが、まず身体面についての診察と検査で器質的疾患を除く除外診断をしたうえで、家族などを含む生活歴や生活環境、患者自身の性格傾向、学校生活や結婚生活などを含む環境問題などについて聞き、続いて質問紙法などによる心理テスト、あるいはポリグラフによる心身両面の相関を調べる。
心身症患者は自己制御、すなわちセルフコントロールの能力を失っているので、これを回復させることが治療の基本となる。まず医師による簡易精神療法をはじめ、向精神薬による薬物療法や催眠療法などを行い、続いて自律訓練法を指導し、行動療法、バイオフィードバック法、交流分析などによってセルフコントロールができるようにする。また、森田療法や断食療法なども行われる。最後にはグループ・セラピー(集団療法)によって社会復帰に導いていく。
[下坂幸三]
(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)
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…軽症では短距離の駆足,階段昇降などに際して初めて息ぎれを感ずるが,より重症になると歩行でも息ぎれし,さらに重症では,会話,洗顔などで息ぎれを感ずるようになる。
[原因となる病気]
きわめて多数であるが,大別すると,吸気中の酸素欠乏,肺機能障害,呼吸筋麻痺,心内シャント,血液酸塩基平衡障害,中枢神経障害,心身症となる。吸気中の酸素欠乏は気圧の著しく低下する高地滞在,高空飛行などにみられる。…
…また,自己暗示から蕁麻疹(じんましん)や気管支喘息の生ずる場合のあることも知られている。このような病態は心身症と呼ばれている。 心身医学では,身体因子ばかりでなく,社会‐心理的因子をも考慮しつつ,心身一体となった人間を診療するという立場に立つ。…
…不適応におちいると上述の生理学的な反応系の作用によって,胃・十二指腸潰瘍,高血圧,ある種の糖尿病のような病気を生じる。このように心理的なストレスで身体疾患が生じた場合が心身症と呼ばれ,心身医学の対象となっている。また,この心理‐身体的な因果関係はいわゆる心身相関にかかわる主要な部分を占めている。…
※「心身症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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