日本大百科全書(ニッポニカ) 「道二翁道話」の意味・わかりやすい解説
道二翁道話
どうにおうどうわ
江戸後期の石門心学(せきもんしんがく)者中沢道二の道話を、八宮斎(はちのみやいつき)などの門下生が筆録編集した書。6篇(へん)15巻。1795年(寛政7)~1824年(文政7)刊。のちに『道二翁道話続篇』が1843年(天保14)~47年(弘化4)に刊行された。彼の道話は「神道(しんとう)儒道仏道の、生(いき)てぴちぴちするのを、手づかまえにして話す」というように、人間の「本心」の究明のために、儒書・仏書はもちろん、広く和歌や文芸作品なども引用し、加えて庶民の多様な日常生活の体験を素材にする。道二の社会的布教活動とその平易軽妙な語り口は、「道話」という心学の教化方法を定着させ、四民教化において心学といえば道話を連想させることとなった。
[今井 淳]
『石川謙校訂『道二翁道話』(岩波文庫)』▽『柴田実編『日本思想大系 42 石門心学』(1971・岩波書店)』