法律行為などの法律要件および法律がその成立以前に(法律の場合はその施行以前に)さかのぼって効力をもつこと。過去の行為に影響を及ぼし法的安定性を害するので,とくに規定のある場合のほか,原則として認められない。とくに規定のある場合としては,法律行為の取消し(民法121条),時効(144条),遺産の分割(909条)などがある。法律の遡及効については〈法律不遡及の原則〉があり,とくに刑法では遡及させることが人権の保護に反する結果を生ずるので強くこの原則が要求される(事後法の禁止,日本国憲法39条)。民事法の領域では戦後民法の家族法の全面改正の際に,付則により,原則として新しい規定を遡及適用するとされたことがある(1947年,付則4条)。このような規定を経過規定という。
執筆者:桂木 隆夫
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ある法律要件が、要件事実の発生以前にさかのぼって効果(効力)をもつこと。法領域では、遡及効を認めることは法的安定性を害するところから、遡及効は原則として認められない。ただ、たとえば法律行為の取消(民法121条)、時効(同法144条)などのように、とくに法律が遡及効を認めた場合は例外である。とくに問題となるのは、新たに制定された法律が、その制定以前の事実にさかのぼって適用されうるか、である。この点につき、法治主義のもとでは、法律の遡及効を禁止するのが原則となっている。これを法律不遡及の原則または事後法禁止の原則という。ただ、この原則は、事後法により関係者が不利に扱われる場合であって、有利な場合には妥当しない。このことがとくに問題になるのは、刑罰法規の遡及的適用が許されるか、である。近代刑法の基本原則の一つに罪刑法定主義があるが、その派生原理として刑罰法規不遡及の原則があり、憲法第39条もこの原則を採用している。
[名和鐵郎]
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…いったんは有効に成立した契約を事後的に消滅させること。契約の相手方の債務不履行その他一定の場合(解除原因)に,もう一方の契約当事者には契約を解除する権限(解除権)が発生し,解除権の行使である解除の一方的な意思表示によって,契約は契約締結当時にさかのぼって消滅する(遡及(そきゆう)効)。その結果,すでに履行された債務があれば当事者相互に返還し合う義務(原状回復義務)を生じ,またまだ履行されていない債務があればその履行義務を消滅させる効果をもつ。…
※「遡及効」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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