邪眼ともいう。人や物に災いをもたらす超自然的な力をもつ目,およびその力の行使や作用をいう。アラビア語では`ayanという。広く世界各地にこの信仰はみられるが,とくに地中海地域,中近東,南アジアに多い。そのほか北ヨーロッパ,北アフリカ,東アフリカでも信じられ,新大陸では邪視地域からの移民の間にみられる。東アジア,東南アジア,オセアニアではごくまれである。邪視の力をもつとされる人間の種類は社会によってさまざまであり,たとえばインドでは王や聖職者らの地位の高い者,エチオピアのアムハラ族では低いカーストの者がもち,また中東では人はだれでも邪視をもちうると考えられている。神や動物が邪視を放つこともあり,とくにヘビやキツネの目が危険視される。邪視の被害を受けやすい人間は,子どもや赤ん坊などの弱い者,金持や美しい者など,他人に羨望される者であることが多い。また家畜や作物もしばしば被害を受ける。邪視を防ぐ護符もさまざまある。たとえば中東ではヒツジの目,コヤスガイ(子安貝),鏡などが用いられる。手のひらを外に向けて開いた形の護符が中東やイタリアのユダヤ人の間にみられる。塩,炭,ニンニクもしばしば邪視除けに用いられる。青,赤,白,黒など特定の色のビーズ,糸,ひも,リボンが用いられることがとくに地中海地域や中東で多い。邪視はしばしば嫉妬,羨望と関係づけられ,たとえばラテン語やヘブライ語で,また英語やスペイン語でも,ねたみを意味する語が邪視や妖術を暗示する。アラブ諸国では邪視のことをねたみの目という。しかしねたみと邪視が関係しない場合もある。
また邪視と妖術は,ともに特定の人間に内在する神秘的な力が本人の意志とは無関係に他人に災いをもたらすという点で類似しており,両者が明確に区別されなかったり邪視を妖術の一部と考えることも多い。たとえばイギリスの農民たちは人間や家畜の病気や死を何か邪悪な力,つまり妖術師(魔女)や邪視のためと考えた。そして邪視の信仰は妖術信仰と同じくある種の機能,たとえば不幸を説明し,社会的緊張を和らげる機能をもっていることが近年指摘されている。ただし妖術はたいてい特定の社会関係の間で生じ,加害者と被害者の関係が明確であるのに対して,邪視の場合は見知らぬ者が行うこともあり,一般に両者の関係はあいまいで,そのため邪視の者を捜し出したり,告発,制裁することはあまりない。
→呪術
執筆者:板橋 作美
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…しかしその孫の〈すべての技芸の主〉ルーグが魔法の石投機で石を投じて〈目の悪い〉バロールの目を頭の後ろにとばしたため,味方の中に落ちた目はバロール側の戦力を麻痺させてしまい,ルーグの軍が勝利を収めた。 バロールの目のように,見るものに危害や不幸を与えるものを邪視evil eyeという。邪視信仰は有史以前から世界各地にあった。…
※「邪視」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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