日本大百科全書(ニッポニカ) 「酵素番号」の意味・わかりやすい解説
酵素番号
こうそばんごう
enzyme number
enzyme commission number
EC number
EC番号ともいう。酵素は生物がつくる触媒作用をもつタンパク質である。構造が複雑であるため、酵素の分類や命名は化学構造によらないで、触媒する反応の種類や基質(酵素が触媒する反応の反応物質のこと)に基づいて行われる。
酵素番号は酵素を反応の形式に従って系統的に分類するための番号で、ECに始まる4組の数字よりなる。たとえば、EC1.1.1.1とかEC2.1.1.1などで各酵素に固有の番号がつけられている。ECのすぐあとの番号(第一の数)は分類主群(6群ある)のいずれに属すかを表す。EC1群は酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)、EC2群は転移酵素(トランスフェラーゼ)、EC3群は加水分解酵素(ヒドロラーゼ)、EC4群は除去付加酵素(リアーゼ)、EC5群は異性化酵素(イソメラーゼ)、EC6群は合成酵素(リガーゼ)に属すことを示す。第二の数は副群、第三の数は副副群を示し、基質によって分類される。第四の数は副副群のなかの番号である。たとえば、EC1.1.1.1では、EC1.で酸化還元酵素に属すことを、第二の1.で水素を出す基質がアルコール(-CH2-OH)であることを、第三の1.で水素を受け取る基質がNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)であることを示している。この酵素の常用名はアルコール脱水素酵素(アルコールデヒドロゲナーゼAlcohol Dehydrogenase)で、系統名はAlcohol:NAD+ oxidoreductaseである。
このような酵素の分類と命名法の規則は国際生化学連合(現在は国際生化学・分子生物学連合)の酵素委員会が1961年に制定し、その後若干の修正が加えられた。
[徳久幸子]