ウレアーゼ(読み)うれあーぜ(英語表記)urease

翻訳|urease

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウレアーゼ」の意味・わかりやすい解説

ウレアーゼ
うれあーぜ
urease

尿素(H2NCONH2)をアンモニア(NH2)と二酸化炭素(CO2)に加水分解する反応(H2NCONH2+H2O→2NH2+CO2)を触媒する酵素国際生化学連合(現在は国際生化学・分子生物学連合)の酵素委員会が制定した酵素番号はEC3.5.1.5。系統名はウレアアミドヒドロラーゼUrea amidohydrolase。アメリカの生化学者J・B・サムナーは、1926年にナタマメjack beanからウレアーゼを抽出して結晶化に成功した。これは酵素の最初の結晶化で酵素の本体がタンパク質であることを明らかにしたことで有名である。細菌酵母カビ、植物、下等動物などに広く分布する。ナタマメの酵素が詳しく研究されている。分子量48万。精製法、保存条件などにより種々の会合体(2個以上の分子が共有結合以外の分子間相互作用によって結合したもの)が得られる。酵素活性を発現するためにはヒスチジンアミノ酸の一種)、α(アルファ)-アミノ基(カルボキシ基HOOC-の隣のCについたアミノ基-NH2)、チオール基(-SH)が必要である。尿素に対する特異性が高いが、ヒドロキシ尿素、ジヒドロキシ尿素もわずかに分解する。最適pH水素イオン濃度)は6.5(マレイン酸緩衝液)~7.5(トリス緩衝液)。Ag2+、Cu2+などのイオンで阻害される。

 ウレアーゼは自然界の窒素循環の一環を担っている。尿素排泄(はいせつ)型動物(哺乳(ほにゅう)類その他)はタンパク質を摂取してその最終代謝産物として尿素を排出する。ある種の細菌は尿素からこの酵素によってアンモニアを生成する。高等植物、藻類など光合成生物や微生物はアンモニアからタンパク質、核酸などの有機窒素化合物を合成する。

[徳久幸子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウレアーゼ」の意味・わかりやすい解説

ウレアーゼ
urease

尿素 (H2N)2CO を加水分解してアンモニアと二酸化炭素 ( 2NH3+CO2 ) にする酵素。微生物,高等動植物の組織などに広く分布する。ヒトには存在しない。分子量 45~50 万の単純蛋白質。 J.サムナーによってナタマメから史上最初の結晶酵素として得られた (1926) が,数年間は,R.ウィルシュテッターなどドイツ学派の見解に押されて,疑問視されていた。

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