酸化トリウム(読み)サンカトリウム

化学辞典 第2版 「酸化トリウム」の解説

酸化トリウム
サンカトリウム
thorium oxide

ThO2(264.0369).酸化トリウム(Ⅳ),二酸化トリウムともいう.シュウ酸塩,水酸化物,硝酸塩炭酸塩などの強熱,空気または酸素中での金属トリウムの加熱により得られる.天然には,方トリウム鉱に主成分として含まれている.白色粉末で蛍石型構造.融点3390 ℃ は金属酸化物中で最高,沸点4400 ℃.密度10.001 g cm-3(25 ℃).非常に安定で,水,アルカリ,希酸に不溶,熱濃硫酸に可溶.高温で生成したものほど酸に溶けにくい.四塩化炭素やホスゲンなどの塩素化剤と反応して塩化トリウムに,また金属カルシウムやマグネシウムによって還元されて金属トリウムになる.硝酸,硫酸製造,石油化学工業などで触媒として,また,タングステンに少量添加すると熱電子を放出しやすくなるため,アーク溶接用電極,放電灯陰極に使われる.ニッケルに約2% ThO2を加えたニッケル合金は,耐腐食性および強度が増加するため,ロケット,化学装置,炉などに使われる.発がん性物質.[CAS 1314-20-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化トリウム」の意味・わかりやすい解説

酸化トリウム
さんかトリウム
thorium oxide

化学式 ThO2トリアともいう。トリウムの硝酸塩,シュウ酸塩,炭酸塩,硫酸塩などを強熱して得られる。無色粉末。融点 3220±50℃,融点 4400℃,比重 9.87。水,酸に難溶。特に高温で生成したものほど酸に溶けにくい。化学的に安定で,常温では電気の絶縁体である。石炭液化の触媒にも使われる。遠赤外線光源であるガスマントルに少量の酸化セリウムを混ぜて,主成分として用いられる。タングステンに少量混ぜて真空管電極にも使われた。

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