里地里山法(読み)さとちさとやまほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「里地里山法」の意味・わかりやすい解説

里地里山法
さとちさとやまほう

生物多様性保全を目的とする法律の一つ。日本に生息する生物やその生育環境が深刻な危機に直面していることから、各地域における保全活動を促進する目的で、2010年(平成22)に公布され、2011年に施行された。正式名称は「地域における多様な主体連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律」(平成22年法律第72号)。生物多様性地域連携促進法、生物多様性保全活動法ともよばれる。

 1993年の生物多様性条約の締結後、2010年には第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催され、保全活動を促進する新たな制度が求められるようになった。このため、里地里山法では、自然や社会的な条件が異なるそれぞれの地域で、地方公共団体NPOなどの民間団体、地域の住民や農林漁業者、専門家、企業などが連携した「地域連携保全活動」を行うための基本方針が示された。その活動のためには、自然公園法や森林法などによる規制を緩和する特例措置が設けられ、協議会や支援センターの設置基準なども定められている。市町村は関係団体と協議して実行計画「地域連携保全活動計画」を作成し、自治体と地域住民が協力しながら、人里に近い山や森林に保全活動を広げることが期待されている。

 日本の国土の4割に及ぶとされる里地里山は、生物多様性保全活動の効果がもっとも期待される地域であり、対象となる地域では里地里山法という名称が浸透している。自然学校を創設し、人材育成から展開している石川県珠洲(すず)市の世界農業遺産能登の里山里海」保全活動や、住民グループが森林セラピー事業を開始した「信州信濃町癒(いや)しの森」(長野県)など、地域の魅力を生かした活発な取り組みが広がりつつある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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