森林法(読み)シンリンホウ

デジタル大辞泉 「森林法」の意味・読み・例文・類語

しんりん‐ほう〔‐ハフ〕【森林法】

森林の保護・培養と森林生産力の増進に関する基本事項規定する法律。昭和26年(1951)施行

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精選版 日本国語大辞典 「森林法」の意味・読み・例文・類語

しんりん‐ほう‥ハフ【森林法】

  1. 〘 名詞 〙 森林に関する保護・監督について規定する法律。日本では明治三〇年(一八九七)初めて制定。同四〇年改正。昭和二六年(一九五一)旧法を全面的に改正して公布。〔仏和法律字彙(1886)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「森林法」の意味・わかりやすい解説

森林法 (しんりんほう)

森林の保続培養と森林生産の増進とを目的として,森林計画保安林,その他の森林に関する基本的事項を定めた法律。1951年公布。明治政府は,1869年(明治2)の版籍奉還により諸藩所領の直轄林野を官林に編入したが,その後,76年の地租改正事務局議定〈山林原野官民所有区別派出官員心得書〉によって,反証のないかぎり官民有未定の林野をすべて官有と推定する林野の大量官地編入政策が実施され,明治20年代には官林の取締りがしだいに厳しくなった。農民は官林の利用や立入りが困難になったため,盗伐や下戻運動を展開し,官民有区分に対する批判を強めた。この運動が具体的には低価払下げ,林産物採取権の付与,使用慣行の証蹟調査の請願といった形で集約していくのに平行して,おりからの日清戦争や鉄道の発達による木材需要の増大が背景となって,民間の林業経営が盛んになり,林業家,山林地主の側からも盗伐や火災の防止等に関する森林管理の要請が強まった。

 このような情況の下で97年の旧森林法が制定されたのである。当初,政府は民有林をも含めた管理の法制度を構想していたが,立法の過程で修正を余儀なくされ,結局,旧森林法は公有林,社寺林の監督,保安林制度および森林犯罪に関する規制をなすにとどまった。その後,私的林業の発達に伴い,1907年には公有林野に対する営林監督の強化,林産物搬出等のための土地使用権の設定,森林組合設立奨励の規定を設ける森林法の全面的改正がなされ,さらに39年には戦争経済下での木材確保を目的とする法改正が行われたのである。

 51年の森林法の改正は,農地解放が山林解放にまで行き着くかという政治問題に消極的な形での決着をつけるものであった。この改正は,農地解放の終了後の1950年に占領軍総司令部のだしたステートメントにそってなされたもので,国の責任において全森林を対象とする森林計画が策定され,森林所有者はこの計画に従った造林をなす義務を負い,森林計画による施業を担保するために普通林の伐採に制限が加えられ,保安施設地区の制度が設けられ,森林組合が森林所有者の共同組合組織として改組された。森林計画による造林義務の導入と森林組合の改組は,新しい森林法の大きな特徴であった。その後,78年の法改正によって,森林組合に関する特別法である森林組合法が制定された。現行の森林法は農林水産大臣が定める全国森林計画都道府県知事がそれを受けて定める地域森林計画,保安施設,森林施業のための他人の土地の使用,中央および地方の森林審議会,森林犯罪等に関する規定を置くものとなっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「森林法」の意味・わかりやすい解説

森林法
しんりんほう

森林の管理や森林資源の保続および森林生産力の増進に関する基本的事項を規定する法律。昭和26年法律第249号。林業に関する政策目標と、その基本的施策については、別に森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)が制定されている。

[笠原義人]

沿革

わが国では1897年(明治30)に初めて森林法が制定されたが、このときは公有林(市町村林、村落有林)と社寺林の監督、保安林制度、森林犯罪に関する規定にとどまり、1907年(明治40)の一部改正で公有林野の監督強化と民有林全般の開発を目的とする土地使用権の設定や森林組合制度が創設された。さらに1939年(昭和14)の大改正では、森林所有者の施業案編成義務と森林組合の強制設立が規定され、戦時下の民有林統制が法的に明確となった。

 第二次世界大戦後、1951年(昭和26)には森林法が全面的に改正され、手続上は旧森林法を廃し、新たに現行森林法が公布される形がとられた。この改正では森林計画制度が採用され、森林組合は協同組合組織へ改組された。なお、1978年に森林組合法が成立し、森林法下の森林組合規定は削除となった。

[笠原義人]

現行法の主要規定

現行の森林法の中心をなすものは、森林計画制度である。これは、資源保続のため国の責任において森林計画をたて、計画実施に必要な植栽などの施業を森林所有者に義務づけるものである。全国森林計画、地域森林計画に基づいて森林所有者が1人または共同でその所有林について5年を1期とする森林施業計画を作成し、知事の認可を受ける。計画作成は強制されるものではないが、認可を受けて施業していれば、税制や補助・融資などで優遇される。

 また、森林法は、必要があれば森林を保安林に指定できるとしているが、現在森林ではない土地であっても、国土荒廃予防、局所危険防止の目的を達するため国が造林事業または森林土木事業を行う保安施設地区として指定することを認めている。この地区に指定された土地は保安林と同様に、開墾その他土地の形質を変更する行為が制限される。保安施設地区指定の期間(7年以内)満了のとき森林であるものは自動的に保安林に編入される。

 なお、森林窃盗、森林放火・失火などは、一般刑法から外して、森林法の特別刑法によって処罰されることになっている。

[笠原義人]

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百科事典マイペディア 「森林法」の意味・わかりやすい解説

森林法【しんりんほう】

森林生産力向上を目的とした森林行政の基本法(1951年)。林業基本法の基本計画と長期見通しに即した森林計画の樹立,保安林・保安施設地区の指定,施業・測量のための他人の土地使用,森林審議会などについて規定。旧森林法(1907年)を全面改正して成立。
→関連項目公有林小繋事件失火罪

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「森林法」の意味・わかりやすい解説

森林法
しんりんほう

昭和 26年法律 249号。森林に関する基本を定めた法律。森林計画,保安林,森林組合などを中心にし,森林の保続培養と森林生産力の増進をはかるとともに,国土の保全を目的としている。 1907年の法律が第2次世界大戦後,全面改正された。 (→森林・林業基本法 )

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世界大百科事典(旧版)内の森林法の言及

【自然保護】より

…1918公布。63年改正までは狩猟法といった)による狩猟鳥獣の指定,鳥獣保護区,森林法(1907年公布の旧法を全面的に改め51年に公布)による各種保安林,国有林野における学術参考林などがある。しかし,いずれも自然保護にかかわる直接的な規制とはいえなかった。…

【森林組合】より

…1907年森林法改正のときに制度化された森林所有者の団体。森林法は1897年にはじめて制定されたが,それは二つの柱から成り立っていた。…

【林業政策】より

…このバランスをとりながら両立させるために加える国の行政上の干渉,監督を林業政策という。〈伐る〉ことと〈伐らない〉こととが不可分であるとの理念の具体的な方策を示しているのは森林法である。 日本ではじめて森林法が制定されたのは1897年であったが,それ以前にも政策の方向は示唆されていた。…

※「森林法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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