平地農村、都市近郊に存在した元薪炭林のこと。1960年(昭和35)ごろまで家庭用エネルギー(薪(まき)や木炭)、農業資材(緑肥)、住宅資材(屋根を葺(ふ)く萱(かや))など、生活に必要な資材を生産するために、村の周辺に入会(いりあい)林野または個人の森林が存在した。しかし、日本経済の発展に伴い、石油や化学肥料が利用されるようになると、この林野が利用されなくなり、放置された。1970年代以降、これらの林野が住宅やレジャーランド、ゴルフ場などとして大規模に開発されるようになり、これに反対する自然保護運動、トラスト運動がおこり、開発と保全が争点となった。その後、こうした林野は広く「里山」とよばれるようになり、環境林、風景林として維持するほか、生物の多様性を確保するビオトープの場所とするなど、新しい利用と管理が模索されることとなった。さらに、2000年(平成12)の循環型社会形成推進基本法の制定後、木質バイオマスが再生可能エネルギーの一つとして広く認識されるようになり、里山を薪やチップ、木質ペレットなどのエネルギー供給地として再評価する気運が高まっている。
[飯田 繁・佐藤宣子]
奥山に対して人家の近くにある山をいうが,厳格な定義はない。古くから四壁林(しへきばやし),地続山(ちつづきやま)といわれていたのは,集落の周辺の山,田や畑に接続する山を意味し,里山は村落での生活の燃料採取の場であり,田畑の肥料の給源であった。したがって,村民共同で入林する入会山(いりあいやま)であった。幕末時代には換金作物を生産する風潮になり,これに対応して,近在の入会山地の個人所有への分割が進み始め,換金目的の製炭やスギ,ヒノキの人工造林が個人として実行されるようになった。明治30年ころからいっそうこの傾向が進んだ。しかし,入会の状態によっては過度の収奪的な山林の利用が進み,山地ははげ山化し,水土保全の不良な環境を作り出した。近年,都市近郊の里山地帯は乱開発の対象地となっているが,生活環境保全林造成の必要性の大きい地域ともなっている。一方において,人工林造成の進んだ里山地帯は用材林生産地として大きな比重をもってきている。奥地の天然林利用と里山の人工林利用との両者の利用開発の体系化が現在の課題となっている。
執筆者:筒井 迪夫+橋本 与良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(池上甲一 近畿大学農学部教授 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…山は人間に対して,正と負との両面の働きかけをすることにより,恩頼と畏怖の観念を同時に併存させた神秘的な存在であった。 山の領域空間は,人里の周囲の里山,そこから深く入った奥山,さらに険しい岳(たけ)とに分類することができる。里山では焼畑や常畑耕作を行い,草刈りや薪炭の製産を行って,日常的に身近な空間であるが,奥山は深い森林の中で猟師,木地屋(きじや),たたら師などの漂泊的な生産者の活動の場であった。…
※「里山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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