野村財閥(読み)のむらざいばつ

改訂新版 世界大百科事典 「野村財閥」の意味・わかりやすい解説

野村財閥 (のむらざいばつ)

大正~昭和初期に証券,金融業を中心に発展した財閥。大阪の大阪屋両替店を前身とする。日清戦争後に2代目当主野村徳七(1878-1945)が株式売買業務進出を推進し,日露戦争期から第1次世界大戦期にかけて,調査部を活用しながら株式取引を舞台に急速に資産を拡大していった。それを基礎に第1次大戦期には事業の多角化を開始して,1917年従来の野村徳七商店を株式会社野村商店に改組し,翌18年大阪野村銀行(資本金1000万円)を設立(1927年に野村銀行に改称),25年にその証券部を公債・社債取引を業務とする野村証券(資本金500万円)として独立させた。この間1922年には統轄機関として野村合名会社が設立されている。さらに昭和期に入り,信託会社,生命保険会社を傘下に入れ,それぞれ野村信託,野村生命としたが,他方で危険の大きな株式売買業務(1923年野村商店を大阪屋商店に改称)を傘下から切り離していった。こうして後発ながら金融・証券事業を中心に事業網を多角化し,財閥としての内実を備えていったが,工業部門は手薄で,有力な傘下企業としては傍系会社として福島紡績,大阪瓦斯(ガス)がある程度にとどまった。ただ野村財閥は南洋を中心に海外事業に積極的であった点に特色があり,規模は小さかったが,野村東印度殖産会社,野村林業(朝鮮),野村南米農場,シンガポール野村商店などを傘下に擁していた。なお第2次大戦後の財閥解体時に解体されたが,旧野村財閥の事業は野村証券,大和銀行(旧野村銀行。現,りそな銀行),東京生命(旧野村生命。現,T&Dフィナンシャル生命)などの企業として存続している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「野村財閥」の意味・わかりやすい解説

野村財閥
のむらざいばつ

金融資本を中心とし昭和初期から第2次世界大戦中に発展した新興財閥の一つ。 1906年2代目野村徳七が家業の両替店を廃止して野村株式店を創業,日露戦争以後投機で巨利を収め,17年野村商店に改組。 18年大阪野村銀行 (資本金 1000万円) を設立,その後金融部門以外にも繊維工業,ホテル業など多分野に進出。 22年一族の出資により野村合名会社を設立して傘下企業の統轄会社とし,25年証券部門を分離して野村證券設立,さらに野村信託,野村生命などを設立し,日中戦争前後に野村合名会社を中核に銀行,信託,生命保険など金融資本を中心とした財閥に発展したが,産業部門は福島紡績,大阪瓦斯のほかは貧弱であった。第2次世界大戦後解体されたが,野村銀行は大和銀行と改称し中堅都市銀行として,野村證券は業界のトップ企業として成長している。

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