野沢吉兵衛(読み)のざわきちべえ

改訂新版 世界大百科事典 「野沢吉兵衛」の意味・わかりやすい解説

野沢吉兵衛 (のざわきちべえ)

義太夫節三味線演奏者。(1)初世(?-1815(文化12)) 本名丹波屋吉兵衛。2世野沢喜八郎門人。吉弥,吉五郎から吉兵衛となる。1806年兵衛名禁止に伴い,一時,吉平と名乗る。(2)3世(1821-62・文政4-文久2) 本名佐田屋市治郎。鶴沢文三門人で,父は初世竹本越路太夫。市治郎,2世勝鳳から,1844年(弘化1)3世をつぐ。5世竹本染太夫(初世竹本津太夫,のち越前大掾),5世竹本春太夫らを弾き,野沢中興の祖とよばれた。野沢文庫に朱章が伝わる。(3)4世(1830-81・天保1-明治14) 本名鈴木東三郎。3世門人で,虎造,5世勝市,吉作,4世吉弥を経て4世となる。5世竹本春太夫を弾く。(4)5世(1841-1911・天保12-明治44) 本名鈴木繁造。通称江戸堀。3世門人で,6世吉治郎,5世吉弥から5世を襲名竹本摂津大掾を弾く。(5)6世(1868-1924・明治1-大正13) 本名松井福松。6世吉弥門人で,兵三,3世吉三郎,7世吉弥から6世をつぐ。3世竹本越路太夫,3世竹本津太夫を弾く。野沢会を設立して後進養成につとめた。(6)7世(1879-1942・明治12-昭和17) 本名竹中卯之助。通称夙川。6世門人で,兵一,市治郎,4世吉三郎から7世を襲名。6世竹本土佐太夫を弾く。(7)8世(1888-1950・明治21-昭和25) 本名真次恒三。7世野沢喜八郎門人。9世吉五郎から8世を襲名。(8)9世(1903-80・明治36-昭和55) 本名川端陸三。7世喜八郎門人。喜代之助から5世吉三郎を経て9世となる。晩年,4世竹本津太夫を弾くようになってから,持ちまえの大きくきれいな音に内容が伴い,注目を浴びた。
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新撰 芸能人物事典 明治~平成 「野沢吉兵衛」の解説

野沢 吉兵衛(9代目)
ノザワ キチベエ


職業
義太夫節三味線方(文楽)

専門
人形浄瑠璃,三味線

本名
川端 陸三(カワバタ リクゾウ)

別名
前名=野沢 喜代之助,野沢 吉三郎(5代目)

生年月日
明治36年 6月13日

出生地
大阪府

経歴
大正3年11歳で7代目野沢喜八郎に入門、喜代之助を名乗り、14歳で初舞台。のち9代目野沢吉五郎(8代吉兵衛)、4代目野沢吉三郎(7代吉兵衛)預かりとなる。昭和17年5代目吉三郎を経て、38年に9代目吉兵衛を襲名。晩年は7代目竹本土佐太夫、4代目竹本津太夫の相三味線を務めた。おおらかな芸風で、文楽三味線の貴重な存在だった。

受賞
芸術選奨文部大臣賞〔昭和54年〕

没年月日
昭和55年 7月9日 (1980年)


野沢 吉兵衛(5代目)
ノザワ キチベエ


職業
義太夫節三味線方

本名
鈴木 繁造

別名
通称=江戸堀,前名=野沢 吉次郎,野沢 吉弥(5代目)

生年月日
天保12年

出生地
讃岐国三本松(香川県)

経歴
讃岐に漁師の子として生れ、竹本泉太夫が養父。幼時より義太夫三絃を好み、3代目野沢吉兵衛に師事し、吉次郎を名乗る。慶応元年(1864年)5代目野沢吉弥を経て、明治17年5代目吉兵衛を襲名し、2代目竹本越路太夫の相三味線を務め人気を得た。37年引退。

没年月日
明治44年 2月22日 (1911年)

家族
養父=竹本 泉太夫


野沢 吉兵衛(7代目)
ノザワ キチベエ


職業
義太夫節三味線方

本名
竹中 卯之助

別名
通称=夙川,前名=野沢 兵市,野沢 市治郎,野沢 吉三郎(4代目)

生年月日
明治12年 11月22日

出生地
大阪府 西横堀

経歴
明治24年3代目野沢吉三郎(のち6代目野沢吉兵衛)に入門、兵市を名乗った。24年彦六座へ出演。34年野沢市次郎、41年4代目吉三郎を経て、大正15年7代目吉兵衛を襲名した。明治38年以降、3代目竹本伊達太夫(のち6代竹本土佐太夫)の相三味線を務め、名コンビをうたわれた。昭和12年引退。

没年月日
昭和17年 4月23日 (1942年)


野沢 吉兵衛(6代目)
ノザワ キチベエ


職業
義太夫節三味線方

本名
松井 福松

別名
前名=野沢 兵三,野沢 吉三郎(3代目),野沢 吉弥(7代目)

生年月日
明治1年 9月6日

出生地
大阪府 北堀江

経歴
義太夫節三絃の名家に生まれる。明治10年野沢吉三郎(のちの6代目吉弥)に入門。兵三、3代目吉三郎、7代目吉弥を経て、40年6代目吉兵衛を襲名。23年間3代目竹本越路太夫の相三味線を務め、また野沢会を結成、研究と後進指導にも努めた。品格の高い芸風で世話物にすぐれた。

没年月日
大正13年 6月4日 (1924年)


野沢 吉兵衛(8代目)
ノザワ キチベエ


職業
義太夫節三味線方

本名
真次 恒三

別名
前名=野沢 常造,野沢 兵内(3代目),野沢 吉五郎(9代目)

生年月日
明治21年 9月20日

出生地
京都府 京都市四条御幸町

経歴
明治34年5代目野沢吉兵衛に入門し、常吉、のち常造を名乗る。39年3代目兵内、大正6年9代目吉五郎を経て、昭和23年8代目吉兵衛を襲名。

没年月日
昭和25年 9月19日 (1950年)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

20世紀日本人名事典 「野沢吉兵衛」の解説

野沢 吉兵衛(9代目)
ノザワ キチベエ

昭和期の義太夫節三味線方(文楽)



生年
明治36(1903)年6月13日

没年
昭和55(1980)年7月9日

出生地
大阪府

本名
川端 陸三(カワバタ リクゾウ)

別名
前名=野沢 喜代之助,野沢 吉三郎(5代目)

主な受賞名〔年〕
芸術選奨文部大臣賞〔昭和54年〕

経歴
大正3年11歳で7代目野沢喜八郎に入門、喜代之助を名のり、14歳で初舞台。のち9代目野沢吉五郎(8代吉兵衛)、4代目野沢吉三郎(7代吉兵衛)預かりとなる。昭和17年5代目吉三郎を経て、38年に9代目吉兵衛を襲名。晩年は7代目竹本土佐太夫、4代目竹本津太夫の相三味線を務めた。おおらかな芸風で、文楽三味線の貴重な存在だった。


野沢 吉兵衛(7代目)
ノザワ キチベエ

大正・昭和期の義太夫節三味線方



生年
明治12(1879)年11月22日

没年
昭和17(1942)年4月23日

出生地
大阪府西横堀

本名
竹中 卯之助

別名
通称=夙川,前名=野沢 兵市,野沢 市治郎,野沢 吉三郎(4代目)

経歴
明治24年3代目野沢吉三郎(のち6代目野沢吉兵衛)に入門、兵市を名のった。24年彦六座へ出演。34年野沢市次郎、41年4代目吉三郎を経て、大正15年7代目吉兵衛を襲名した。明治38年以降、3代目竹本伊達太夫(のち6代竹本土佐太夫)の相三味線を務め、名コンビをうたわれた。昭和12年引退。


野沢 吉兵衛(6代目)
ノザワ キチベエ

明治・大正期の義太夫節三味線方



生年
慶応4年9月6日(1868年)

没年
大正13(1924)年6月4日

出生地
大阪・北堀江

本名
松井 福松

別名
前名=野沢 兵三,野沢 吉三郎(3代目),野沢 吉弥(7代目)

経歴
義太夫節三絃の名家に生まれる。明治10年野沢吉三郎(のちの6代目吉弥)に入門。兵三、3代目吉三郎、7代目吉弥を経て、40年6代目吉兵衛を襲名。23年間3代目竹本越路太夫の相三味線を務め、また野沢会を結成、研究と後進指導にも努めた。品格の高い芸風で世話物にすぐれた。


野沢 吉兵衛(8代目)
ノザワ キチベエ

明治〜昭和期の義太夫節三味線方



生年
明治21(1888)年9月20日

没年
昭和25(1950)年9月19日

出生地
京都府京都市四条御幸町

本名
真次 恒三

別名
前名=野沢 常造,野沢 兵内(3代目),野沢 吉五郎(9代目)

経歴
明治34年5代目野沢吉兵衛に入門し、常吉、のち常造を名のる。39年3代目兵内、大正6年9代目吉五郎を経て、昭和23年8代目吉兵衛を襲名。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

朝日日本歴史人物事典 「野沢吉兵衛」の解説

野沢吉兵衛(3代)

没年:文久2.7.27(1862.8.22)
生年:文政4(1821)
江戸末期の人形浄瑠璃三味線の名手。本名佐田屋市治郎。通称鬼吉兵衛。大坂生まれ。初代竹本越路太夫(はじめは三味線弾きで鶴沢勝鳳)の子。14歳で鶴沢文三に入門し市次郎,2代目勝鳳を経て天保11(1840)年に3代目吉兵衛を襲名,5代目竹本染太夫の「国性爺合戦」の三段目切を弾き,以後,5代目竹本春太夫を弾いた。門弟の亀次郎の美声に目をつけ春太夫に入門させて南部太夫と名乗らせ,やがて自ら三味線を弾いて2代目竹本越路太夫を襲名させたのが,のちの摂津大掾である。腕の強い芸で,旧来の曲に手を加えて当世風に工夫したという。野沢中興の祖と賛えられている。4,5代はいずれも3代目の門人が継いだ。<参考文献>野沢勝平事加藤善一『野沢の面影』

(山田庄一)


野沢吉兵衛(6代)

没年:大正13.6.4(1924)
生年:明治1.9.6(1868.10.21)
明治大正期の文楽三味線の名手。本名松井福松。大阪市の出身で8歳で6代目吉弥に入門,兵三,3代目吉三郎,7代目吉弥を経て明治40(1907)年に吉兵衛を襲名した。長く3代目竹本越路太夫の相三味線を勤め,6代目豊沢広助,3代目鶴沢清六と三幅対と称された。品格の高い芸風で世話物にすぐれ,また野沢の一門を集めて野沢会を結成,後進の育成に努めた。<参考文献>野沢勝平事加藤善一『野沢の面影』,『義太夫年表/明治篇,大正篇』

(山田庄一)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「野沢吉兵衛」の解説

野沢吉兵衛(3代) のざわ-きちべえ

1821-1862 江戸時代後期の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
文政4年生まれ。初代竹本越路太夫(こしじだゆう)の子。義太夫節。鶴沢文三の高弟。2代野沢勝鳳をへて天保(てんぽう)15年3代吉兵衛を襲名。5代竹本春太夫らの相三味線をつとめ,野沢中興の祖といわれた。文久2年7月27日死去。42歳。大坂出身。本名は佐田屋市次郎。通称は鬼吉兵衛。

野沢吉兵衛(5代) のざわ-きちべえ

1841-1911 明治時代の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
天保(てんぽう)12年生まれ。義太夫節。養父竹本泉太夫,3代野沢吉兵衛に師事し,5代吉弥をへて明治17年5代吉兵衛を襲名。竹本摂津大掾(せっつのだいじょう)の相三味線をつとめた。明治44年2月22日死去。71歳。讃岐(さぬき)(香川県)出身。本名は鈴木繁造。通称は江戸堀。

野沢吉兵衛(6代) のざわ-きちべえ

1868-1924 明治-大正時代の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
慶応4年9月6日生まれ。義太夫節。6代野沢吉弥の門弟。兵三,3代吉三郎,7代吉弥をへて明治40年6代を襲名。3代竹本越路太夫の相方をつとめ,後進育成のために野沢会を組織した。大正13年6月4日死去。57歳。大坂出身。本名は松井福松。

野沢吉兵衛(4代) のざわ-きちべえ

1830-1881 江戸後期-明治時代の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
天保(てんぽう)元年生まれ。義太夫節。3代の門弟。虎造,勝市,吉作,4代吉弥をへて文久3年4代を襲名。5代竹本春太夫の相方をつとめた。明治14年12月30日死去。52歳。尾張(おわり)(愛知県)出身。本名は鈴木東三郎。

野沢吉兵衛(7代) のざわ-きちべえ

1879-1942 明治-昭和時代前期の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
明治12年11月22日生まれ。義太夫節。6代の門弟。兵市(一),市次郎,4代吉三郎をへて大正15年7代を襲名。6代竹本土佐太夫の相方をつとめた。昭和17年5月23日死去。64歳。大阪出身。本名は竹中卯之助。

野沢吉兵衛(初代) のざわ-きちべえ

?-1815 江戸時代中期-後期の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
義太夫節。京都の人。2代野沢喜八郎の門弟。2代吉五郎を名のるが天明8年吉兵衛と改名し,京坂を中心に活動。2代竹本内匠(たくみ)太夫らの相方をつとめた。文化12年10月12日死去。通称は松屋町。

野沢吉兵衛(8代) のざわ-きちべえ

1888-1950 明治-昭和時代の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
明治21年9月20日生まれ。義太夫節。7代喜八郎,5代吉兵衛,6代吉兵衛に師事。9代吉五郎をへて昭和23年8代を襲名。昭和25年9月20日死去。62歳。京都出身。本名は真次恒三。

野沢吉兵衛(2代) のざわ-きちべえ

?-1853 江戸時代後期の浄瑠璃(じょうるり)三味線方。
義太夫節。初代の門弟。文政10年以降に2代を襲名した。嘉永(かえい)6年6月29日死去。京都出身。前名は吉弥。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「野沢吉兵衛」の意味・わかりやすい解説

野沢吉兵衛(3世)
のざわきちべえ[さんせい]

[生]文政4(1821).大坂
[没]文久2(1862).7.27. 江戸
義太夫節の三味線方。本名佐田屋市治郎。通称鬼吉兵衛。1世竹本越路太夫の子。天保 11 (1840) 年3世吉兵衛を襲名。旧曲を当世風に編曲したことで知られる。野沢中興の祖。

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367日誕生日大事典 「野沢吉兵衛」の解説

野沢 吉兵衛(8代目) (のざわ きちべえ)

生年月日:1888年9月20日
明治時代-昭和時代の浄瑠璃三味線方
1950年没

野沢 吉兵衛(7代目) (のざわ きちべえ)

生年月日:1879年11月22日
大正時代;昭和時代の文楽三味線方
1942年没

野沢 吉兵衛(6代目) (のざわ きちべえ)

生年月日:1868年9月6日
明治時代;大正時代の文楽三味線方
1924年没

野沢 吉兵衛(9代目) (のざわ きちべえ)

生年月日:1903年6月13日
昭和時代の義太夫節三味線方
1980年没

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