金地金がまとまって取引され,その取引価格が他の取引への指標として影響していく市場をいう。代表的なロンドン,チューリヒ,香港,ニューヨークの各金市場が,四大金市場と称される。1971年8月15日のニクソン・アメリカ大統領の金とドルの交換停止声明(いわゆるニクソン・ショック)によって金は国際通貨の地位から解き放たれ,インフレや国際政治・経済情勢を反映して激しく変動する国際商品としての性格を強めるとともに,四大市場を中心に金市場は連動性を高め,拡大を速めている。
ロンドン金市場は第2次大戦まで世界の金流通を独占する形にあったこと,300年近い金取引の歴史があることなど伝統市場の重みを発揮し,ロスチャイルド・アンド・サンズ,ジョンソン・マッセー・バンカーズなどの五大業者が午前と午後一堂に会しての取引価格は,ロンドン・フィクシング・プライスとして最も重視されている。チューリヒ市場がロンドンと並ぶ規模の市場に発展したのは,1968年3月にさかのぼる。前年11月のポンド切下げに端を発したゴールド・ラッシュがその極に達し,ロンドン金市場が3月いっぱい閉鎖された。このときスイスの三大銀行が民間ゴールド・プール方式でその穴を埋め,当時の金供給の二大国,ソ連,南ア共和国のスイス市場での売却も始まって,取引量拡大につながっていった。香港市場は,伝統的に金選好の強い極東地区と欧米有力市場の接点として重要で,とくに日本市場には営業時間帯が一致するため影響力が強い。ニューヨーク市場は,コモディティ・エクスチェンジの先物取引で,世界の金市場への影響力を70年代後半から高めた。対抗上伝統のロンドンで82年に五大業者も加わって先物取引所が発足したことにも,その影響力がうかがわれる。なお日本でも,82年東京金取引所が設立され,また銀行,証券会社が金の店頭販売に乗り出した。
→金
執筆者:米良 周
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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