国際的に大量かつ自由に取引され,相場が需給関係に敏感で,しかも特定市場の形成価格が国際的に取引の指標とされる商品をいう。こうした条件を満たす商品はまず一次産品(〈一次産品問題〉の項参照)が中心である。一次産品国ということばがあるように,おおまかには国際商品の供給国は発展途上国であり,その輸入国は先進国という色分けができる。そしてこの間に,特定産品の大手供給者であり,同時にある商品では大口輸入国であるアメリカと,ソ連,中国を中心とする共産圏諸国が売手,買手の二つの顔をもって介在する構造が近年まで続いてきた。国際商品相場はだから,発展途上国の供給事情と先進国の需要動向(景気)を軸に,統制経済の共産圏諸国の予想しにくい需給が加わって動くのが基本型であったといえよう。代表的な国際商品は,貴金属,工業用資材,農畜産物の三つに分けられる。貴金属のおもなものは金,白金(プラチナ),銀であり,工業用資材は銅,鉛,亜鉛,スズ,アルミニウムなどの非鉄金属やゴム,また農畜産物では小麦,トウモロコシ,ダイズ,砂糖,コーヒー豆,カカオ豆,綿花,羊毛などが代表的な商品である。ただし貴金属でもとくに銀,白金では工業用用途が多く,また工業用資材のゴムは農産物に分類可能である。これら3商品群は,世界の景気,ひいては需要動向への反応度合が異なる。銅が世界景気の鏡といわれるように,工業用資材の市況(価格)が最も敏感に世界景気と連動する。農畜産物の最大の変動要因は天候で,その年々の主要産地の天候いかんで需給関係はがらりと変わる性格をもつ。貴金属では,金を中心に国際通貨情勢,国際政治情勢をにらんで動く〈資産商品〉の側面がある。
国際商品の指標市場は,需給に見合って相場が自由にしかも敏感に動くシステムをもつことが前提である。かつて一次産品産出国を植民地として抱え,その集散市場として発達してきたロンドンは,大量の国際取引をこなす金融,保険,海運の道具立てがそろい,貴金属,非鉄金属,ゴム,砂糖,カカオ豆などの指標市場としての地位を伝統的に築いている。次にイギリス(ロンドン)と並ぶのはアメリカ市場である。小麦,トウモロコシ,ダイズ,綿花といった農産物の大輸出国として,シカゴの穀物,ニューヨークの綿花といった特定品目についてはかねて指標市場の地位にあったが,1970年代のインフレを通じてアメリカでも先物取引を中心とする商品投機熱が高まり,巨大な需給基盤を背景に金,銀,白金,銅といった商品でも一段と指標性を高めるに至った。イギリス,アメリカの二大市場のほか,特定商品については産地国やその周辺の集散地市場が指標市場となっている。羊毛のオーストラリア,ゴムのシンガポール,スズのマレーシアなどである。いずれも,その国なり地域の輸出ウェイトが高く,世界の買い注文がその市場に集まるためである。〈自国産品の値決め市場は自国で〉という産出国の政策意図も働いている。
なお,いくつかの一次産品については国際商品協定が結ばれている。
執筆者:米良 周
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広義には、国際的に大量の取引が行われる商品をさすが、狭義には、品質が規格化・標準化されていて、同一銘柄の商品は原産国がどこであろうと均一の品質をもつ商品をいう。したがって、国際商品は、統一化・組織化された国際市場で取引され、国際的な需給関係をもつものである。そして、現在から将来にかけての需給関係に関する情報に対して市場が反応し、それによって国際相場が形成され、それが国際商品相場として全世界に報道される。
このような性格をもつ商品には一次産品が多く、金がその典型的な例である。これに対して、加工度の高い工業製品の場合には、品質や細部の設計に相違が生じるから、規格化・標準化がむずかしく、国際商品のような統一化・組織化された国際市場はみいだせない。したがって、工業製品の大半は準国際商品といわれる。こういった国際商品は自由競争市場で取引されているために、需給関係の変化が価格に鋭敏に反映される。しかも国際商品の多くは一次産品であり、その需要・供給の価格弾力性は概して低く、そのために市場メカニズムが十分に機能しない。こうして、国際商品相場は激しく変動し、世界各国に直接間接の影響を及ぼすことになる。これに対処して、国際的に需給の調整を図り、価格を安定化させようとする一施策が国際商品協定である。
[入江成雄]
…日経商品指数は景気指標として作成されたため,その採用品目は需給の変化をすばやく相場に織り込み,しかも国内での重要な工業原材料に絞られている。また採用品目中,非鉄金属,天然ゴム,アメリカ産大豆などの国際商品,それに綿糸,毛糸,砂糖など原料を輸入に仰いでいるため海外原料相場の影響を強く受ける準国際商品が含まれている結果,海外要因も反映し,国際商品価格指数の性格も併せもつ。採用している価格は,それぞれの商品の各取引段階のうち最も需給の変化に敏感な段階のものに限っているうえ,全国の指標とされている地域のものを選んでいるのが特徴である。…
※「国際商品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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