日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄カルボニル」の意味・わかりやすい解説
鉄カルボニル
てつかるぼにる
iron carbonyl
鉄の一酸化炭素錯体の総称。ペンタカルボニル鉄(0)(五カルボニル鉄)Fe(CO)5、ノナカルボニル二鉄(0)(九カルボニル二鉄)Fe2(CO)9、ドデカカルボニル三鉄(0)(12カルボニル三鉄)Fe3(CO)12の三種が知られているが、ペンタカルボニル鉄(0)がもっとも重要で、普通に鉄カルボニルといえばこれをさすことが多い。ペンタカルボニル鉄(0)は、酸化鉄(Ⅲ)を還元して得た細粉状の鉄に約200℃、50~200気圧の下で一酸化炭素を反応させることによってつくられる。常温では粘性のある黄色の液体。水にほとんど溶けないが、ベンゼン、エーテル、アルコールなどの有機溶媒にはよく溶ける。暗所では安定であるが、光を当てるとFe2(CO)9とCOとに分解する。250℃以上で熱分解すると純鉄を残すので鉄の精錬に利用される。液状のペンタカルボニル鉄(0)はきわめて毒性が強く、その蒸気が空気と爆発性混合物をつくるので、取扱いには十分の注意が必要である。
[鳥居泰男]
鉄カルボニル(データノート)
てつかるぼにるでーたのーと
ペンタカルボニル鉄(O) | |
Fe(CO)5 | |
式量 | 195.9 |
融点 | -20℃ |
沸点 | 103℃ |
比重 | 1.462(測定温度19℃) |
結晶系 | 単斜 |