日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄タンタル石」の意味・わかりやすい解説
鉄タンタル石
てつたんたるせき
tantalite-(Fe)
タンタルの鉱石鉱物で、タンタルを主成分とするもっとも普通の鉱物の一つ。単にタンタル石というと、普通は鉄タンタル石をさす。花崗(かこう)岩質ペグマタイト中に産し、リチウム電気石やリチウム雲母(うんも)を含むものに多い。自形は斜方板状ないし柱状。日本では福岡県福岡市長垂(ながたれ)、茨城県常陸太田(ひたちおおた)市の妙見山(みょうけんさん)から少量を産する。外見上鉄コルンブ石に似るが比重が大きい。元素タンタルの名は、ギリシア神話に現れる、地獄で飢えと渇きに苦しんだ神タンタロスTantalosにちなんで命名され、タンタル化合物の多くが水に不溶であったことなどの理由による。端成分に近いものは正方晶系の金紅石型構造をとり鉄タピオル石tapiolite-(Fe)となるため、純粋なFeTa2O6は斜方晶系をとらない。
[加藤 昭]