鉄骨構造(読み)てっこつこうぞう(その他表記)steel frame construction

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄骨構造」の意味・わかりやすい解説

鉄骨構造
てっこつこうぞう
steel frame construction

主要な構造材料として形鋼(かたこう)、鋼板、平鋼(ひらこう)などの鋼材を用い、それらを溶接や高力ボルトなどにより接合して組み立てられた構造のことで、鋼材で組み立てた主要な骨組を「鉄骨」とよび、鉄骨造、鋼構造ともいう。鉄筋コンクリートと鉄骨とを併用する構造は鉄骨鉄筋コンクリート構造とよばれるが、鉄筋コンクリートが単に鉄骨の耐火被覆の意味からだけ使用されている場合や、鉄骨造とコンクリートブロック造とが併用されている場合でも、また構造計算の段階で鉄骨を主要構造部材として設計されたものをも鉄骨構造という場合がある。

[金多 潔]

鋼材

鉄骨構造に使用される鋼材は鉄を主成分とし、炭素を0.12~0.25%程度含有する軟鋼といわれるもので、強度が高く、破壊するまでの変形が大きく、いわゆる粘り強い、靭性(じんせい)を保持することが要求される。また材質が均一であること、加工性のよさ、不燃性などは利点であるが、反面、耐熱性、耐食性にやや欠けるところがある。形鋼、鋼板、平鋼の標準形はJIS(ジス)(日本工業規格)G3192~3194に定められており、ほかに丸鋼や鋼管などが使われる。とくに形鋼は、鋼塊を熱間で圧延した肉厚のある各種断面のものと、薄板でロール状に圧延された鋼板を冷間加工により形鋼にした軽量形鋼とがあり、後者を使用した構造をとくに軽量鉄骨構造といい、間仕切り壁や小規模の建物の骨組に用いる。また平鋼は4.5~36ミリメートルの厚さがあり、幅は25~300ミリメートルまであって、各種の組立て材、構成材として使用される。

[金多 潔]

鉄骨の接合

鉄骨の接合に用いる溶接は、金属を溶かして二つの鋼材を接合するもので、現在もっとも優れた金属接合法である。この溶接法に各種あるが、とくにシールド金属アーク溶接が普通に用いられており、単に溶接という場合はこの方法をさす。これは、被覆アーク溶接棒と溶接しようとする鋼材(母材)との間に放電によるアーク流を生じさせ、その際発生する高熱により母材および溶接棒を溶融し溶接継ぎ目を形づくるものである。溶接は現在行われる金属の接合法のなかではもっとも信頼度が高いが、それに伴う高度な溶接技術と十分な設備が要求される。一方、溶接技術が現在のように高度に普及する以前に広く用いられたリベット接合法は、接合する両部材に穴をあけ、赤熱させたリベットを挿入してリベッターにより締め上げるもので、施工精度の良否による影響が少なく信頼度は高いが、鋼材に穴をあけるために有効断面積が小さくなることや、接合材の形や位置によりリベッターを使用できないことがあるなどの欠点があった。さらに市街地でリベットを打設することは騒音公害のもとになることから、溶接技術の進歩、普及とともにリベット接合法は衰退した。ボルト接合は、リベットと同様に鋼材にあけた穴にボルトを通して、スパナやレンチでナットを締め付けるもので、比較的簡単な作業により高い信頼度が得られる。作業はリベット打ちのような騒音を伴わないが、穴とボルトとの間隙(かんげき)はリベットのように充填(じゅうてん)されないので、部材間の変位が大きくなるおそれがある。この点については、ボルト締め付けを強く行うことによる鋼材接触面間の摩擦力を期待し、引張りに強い高抗張力鋼ボルトを用いた施工が近年普及している。

[金多 潔]

利点

以上のような方法で鋼材を組み立て建物をつくりあげていく鉄骨構造は、部材そのものをあらかじめ工場でつくって現場に搬入できるので、現場作業が速やかに行え、鉄筋コンクリート造のような型枠(かたわく)工事や養生も不要で、耐火被覆材を乾式工法により行えば工事はすべて乾式となり、工場生産による施工の簡易化、能率向上が図られ、労働力の節約やコストの引下げなどが可能となる。

[金多 潔]

種類

鉄骨構造にはトラス構造、ラーメン構造、アーチ構造などの種類があり、なかでもトラス構造とラーメン構造が一般的である。トラス構造は個々の部材を三角形に継ぎ合わせて構面を形成していくもので、平面トラスと立体トラス(ドーム)とがある。平面トラスは大梁間(おおはりま)を経済的に架け渡すことができ、劇場や映画館、工場、体育館など大スパンの屋根や橋梁(きょうりょう)などに用いられる。またラーメン構造は柱、梁構造の高層建築物に用いられることが多い。これらの構造設計にあたっては、建物の使用目的にあう構造形式を採用し、いかなる外力に対しても安全な応力計算を行って、外力を合理的に地盤に伝えるようにする。また、使用部材の種類をなるべく少なくし、材形を単純にし、材料や施工、工期の面で経済的にするなどがとくに考慮される。

[金多 潔]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄骨構造」の意味・わかりやすい解説

鉄骨構造
てっこつこうぞう
steel construction

主要な構造体として鋼材を用いる構造。鉄を建築材料として用いた例は古代にさかのぼるが,主構造体として用いるようになったのは 18世紀以後である。 18世紀から 19世紀初期にかけての鉄骨構造は主として橋梁など土木構造物に用いられ,建築構造体としては屋根の小屋組みに用いられる程度であった。 19世紀なかばになると全構造材を鉄骨とした建築物が出現,材料としての鉄も鋳鉄,錬鉄から鋼鉄へと,より粘り強いものに改良され,1889年パリ万国博覧会の機械館 (張間 115m,長さ 450m) やエッフェル塔 (高さ 320m) のような大規模な鉄骨建築も造られた。超高層ビルの出現も鉄骨構造なしには考えられず,現在最も主要な構造となっている。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「鉄骨構造」の解説

てっこつこうぞう【鉄骨構造】

鉄骨造。⇒鉄骨造

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