1889年、フランス革命100周年を記念してパリで開催された万国博覧会のときに、その会場のモニュメントとして建設された鉄塔。名称は、それを建設した技術者、ギュスターブ・エッフェルの名前に由来している。地上300メートルの高さという当時の建造物では考えられなかった世界最高の鋼鉄の塔を、エッフェルは、彼自身が蓄積してきた鉄橋の架構技術を駆使して実現した。構造材の鋼鉄はフランス国内で生産されたものを使い、2年2か月の工期で工事を完了している。現在、エッフェル塔の高さは324メートル(2007)で、1階(58メートル)、2階(116メートル)、3階(276メートル)に展望室があり、それぞれをエレベーターが連絡する。なお、建設当時、この塔の都市景観に与える影響について賛否両論があったが、いまではパリの景観に欠くことのできないものとなっている。1991年、この塔を含むパリのセーヌ川の河岸は世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[長谷川堯]
『フレデリック・サイツ著、松本栄寿・小浜清子訳『エッフェル塔物語』(2002・玉川大学出版部)』
1889年のパリ万国博覧会の際に建てられた高さ300mの鉄塔。1887-89年建設。設計者のエッフェルにちなんで,この名がある。あまりの斬新さのために,建設にあたって保険会社もしりごみしたほどだが,わずか26ヵ月で1人の死者もなく完成にこぎつけた。新しい工学技術の産物として高く評価される一方で(鉄骨造建築),伝統を重んじる文化人,芸術家から一斉に攻撃された。それでも会期中に600万人の客を集め,万国博終了後も反対を押し切って無電塔として残され,やがてパリを象徴するモニュメントの一つとして認識されるに至った。第2次大戦後はラジオ・テレビ塔として利用され,アンテナを加えた今日の高さは320m。
執筆者:三宅 理一
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…19世紀の半ばごろ,転炉法,平炉法の発明があり,鋼鉄が製造されるようになったため,以後建築構造に用いられる鉄は軟鋼が主体となった。89年のパリ大博覧会に現れた径間115mの三鉸(さんこう)式アーチの巨大な機械館と高さ300mを超すエッフェル塔の二つは,ともに鋼を主材料とし,その後の鉄による建築の可能性を示した。同じころアメリカで鉄骨造建築が普及し,1885年シカゴに10階建てのホーム・インシュアランス・ビルが近代的構造原理にのっとり耐火的で採光のよい高層事務所建築として完成し,これにつづいてアメリカでは各地に鉄骨造の摩天楼が多数建てられるようになった。…
…また塔は,形式や機能,意味が時代や地域によって異なるとはいえ,垂直に伸びる形状がもつ象徴性は変わることがない。その例は,中世ヨーロッパのゴシック大聖堂や都市のシンボルとしての近代の塔(エッフェル塔,東京タワーなど)に見ることができる。 なお,イスラムのモスクの塔については〈ミナレット〉の項目,インドの仏教の高塔については〈ストゥーパ〉〈ビマーナ〉の項目を,それぞれ参照されたい。…
…プレストレストコンクリート部材でトラス構造がつくられることもあるが,きわめてまれである。鋼トラス構造としては,塔では古いものでパリのエッフェル塔(高さ約312m),日本では東京タワー(333m)が代表的。メキシコ湾の石油掘削用プラットホームにはこの両者をしのぐ巨大な構造物がある。…
※「エッフェル塔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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