日本大百科全書(ニッポニカ) 「セイファート銀河」の意味・わかりやすい解説
セイファート銀河
せいふぁーとぎんが
銀河系外にあり、その中心核が活動的な性質をもった銀河。1943年、アメリカのセイファートCarl Keennan Seyfert(1911―1960)が、いくつかの明るい銀河で高温または高エネルギー状態のガスから放射される強い輝線スペクトルを観測し、分類するなかで発見した。セイファート銀河は輝線スペクトルのドップラー効果による幅でタイプⅠとⅡに大別される。タイプⅠは水素や他の重い元素の輝線スペクトルの幅が広く、中心核に毎秒約1万キロメートル程度の速度で運動しているガスをもった銀河である。タイプⅡでは輝線スペクトルの幅は毎秒約1000キロメートルに相当するガスを伴った銀河である。タイプⅠのほうがより活動的と考えられ、銀河の中心核からは光以外に強いX線を放射している。この両者とも中心には巨大なブラック・ホールがあるとされている。最近、タイプⅠとⅡの違いはセイファート銀河を見る幾何学的な条件によるもので、同じものが違って見えるという説が有力である。すなわち、タイプⅡはセイファート銀河の銀河面による吸収(正確にはブラック・ホール周りの降着円盤またはガスによる吸収)が大きい方向から中心核を見る幾何学的条件になっているため中心核の活動領域が見えないものであり、タイプⅠは銀河面を透かさず中心核をのぞき込むように見れるものであると解釈されている。セイファート銀河はクエーサーに似ているが、銀河系からの距離は近く、中心核を取り巻いて広がる銀河の腕の構造も見られる。電波の強度は比較的弱いため、電波の弱い活動銀河とよばれている。中心核から出るX線や連続光は日から月の時間スケールで変動するものが多く、放射線を出す領域は1光年以下と考えられる。
[松岡 勝]