日本大百科全書(ニッポニカ) 「関東御公事」の意味・わかりやすい解説
関東御公事
かんとうおんくじ
鎌倉幕府の御家人(ごけにん)が首長(鎌倉殿(かまくらどの))に対して負う奉公義務、すなわち御家人役全般と同義に用いる場合もあるが、とくには、それから軍役を除外し、経済的義務に限定していう。その内容は、鎌倉御所用途、内裏(だいり)・寺社などの修造費、篝屋(かがりや)用途、防鴨河堤役(ぼうかもがわつつみやく)(京都鴨河の堤防を修築する役)、駅家雑事(うまやぞうじ)以下、朝廷の課す公役と幕府が独自に課す武家役双方の系統を引く恒例・臨時の雑税で、銭納を原則とし、幕府政所(まんどころ)で統轄された。賦課の形式は、所領内の公事田数に応じて御家人単位にあてがわれ、惣領(そうりょう)の支配のもと一族、庶子(しょし)が分担した。もっともこうした事例を幕府草創期に確認することはできず、関東御公事の制は承久(じょうきゅう)の乱後に制度化され、さらに寛元(かんげん)年間(1243~47)を待ち、法的にも完成されたと考えられる。
[杉橋隆夫]
『安田元久著「『関東御公事』考」(御家人制研究会編『御家人制の研究』所収・1981・吉川弘文館)』