日本大百科全書(ニッポニカ) 「防空法」の意味・わかりやすい解説
防空法
ぼうくうほう
空襲に際しての軍防空に即応する官・民、とくに民防空を重視し規定した法律。1937年(昭和12)4月2日に公布された。第一次世界大戦後、航空機は急速に発達し、とくに昭和に入ると空襲の脅威が大きくなったため、軍・官・民すべてにわたっての防空体制が必要となってきた。すでに1928年の大阪での軍・官・民合同の防空演習を皮切りに、主要都市で防空演習が行われるようになっていたが、それらを背景に33年の第64議会で、防空法制定の建議案が可決された。これを契機に陸軍省軍務局で立案に着手したが、事項が広範、多岐、複雑で、しかも国民の権利・義務にかかわるため、陸・海・内務その他の省庁の意見が容易に一致せず、37年に至ってようやく勅令によって公布、施行された。内容は、空襲による危害を防止し軽減するための陸・海軍による防空に即応する民間の態勢で、灯火管制、消防、防毒、避難および救護、監視、警報などを迅速に行わせること、そのために道府県に防空計画を樹立させ、態勢を整えさせることなどであった。当初は防空思想の普及や防空訓練が主であったが、41年に内容が強化され、さらに太平洋戦争の戦局の悪化に伴って、43年には、分散疎開や偽装、非常用物資の配給などが加えられた。しかし本土空襲の激化に伴って実質を失い、敗戦によって機能を停止した。
[吉村徳蔵]