日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿蘇温泉」の意味・わかりやすい解説
阿蘇温泉
あそおんせん
熊本県北東部、阿蘇市内牧(うちのまき)にある温泉。内牧温泉ともいわれる。泉質は硫酸塩泉。湯量が豊かなうえに阿蘇五岳が一望のもとに収められる。突井戸(つきいど)を掘った際、高温の温水が偶然に湧出(ゆうしゅつ)(1898)したのが、阿蘇温泉誕生の契機となった。徳富蘇峰(そほう)命名の大観峰(だいかんぼう)が間近にあること、夏目漱石(そうせき)が長期逗留(とうりゅう)して、小説『二百十日』を脱稿したこと、さらに鉄道の開通、登山道の整備などが相まって、阿蘇南麓(なんろく)の温泉群をしのぐ浴客を集めるようになった。当初、黒川右岸に偏っていた温泉街は、第二次世界大戦後の企業、官公庁の保養所建設ブームにのって、左岸にも拡大し、いまやゴルフ場、スケート場なども整い、総合レジャーランド化している。JR豊肥(ほうひ)本線内牧駅あるいは阿蘇駅からバスで約15分。なお、阿蘇市赤水(あかみず)にある赤水温泉も阿蘇温泉とよぶ。
[山口守人]