雪道を歩くときに用いる藁(わら)製の履き物。その特色は、暖かいうえに歩きやすく、雪が浸透しない。このことばは『日葡(にっぽ)辞書』(1603刊)にも記されているくらいで古い。その利用地域は積雪地帯つまり東北地方から日本海沿岸地域である。稲藁を利用してつくられるので、雪沓といわずにワラグツという地方もある。この履き物は、かつては日本全体にわたって分布していたと考えられ、その形態によってジンベイ、クツ、アサグツ、フカグツの四つに分類される。ジンベイといわれるものは草鞋(わらじ)に爪掛(つまがけ)を作り付けたもの。クツは、シベ、ワラグツともいわれ爪掛のある草履で現在のスリッパ的なもの。アサグツ(浅履)は、スンベ、アクトシベといわれ藁製の短靴、つまり昔の沓の形態のもの。フカグツ(深履)は、現在の長靴に似ておりカンジキ、フンゴミともいわれ、雪中の歩行に履くものである。いずれも藁の編み方に特色がある。
[遠藤 武]
『宮本勢助著『民間服飾誌履物篇』(1933・雄山閣)』
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