電動工具(読み)でんどうこうぐ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電動工具」の意味・わかりやすい解説

電動工具
でんどうこうぐ

電動機を内蔵して木材、金属、コンクリートなどを加工する工具の総称。おもに手に持って取り扱うものをいうが、一部、床上卓上に設置するものも含まれる。出力数十ワットから2キロワット程度の直巻整流子電動機か誘導電動機を使用するが、手持ち型は毎分2万~3万回転の小型・高速整流子電動機が多い。

 日本では1920年代(大正末期から昭和初期)に国産化され、おもに工業用に使用されてきた。50年(昭和25)ごろから60年代にかけて品種が急速に多くなり、とくに電気鉋(かんな)、電気丸鋸(まるのこ)は木造建築工事の省力化を推進した。その後、さらに種類が増え、金属、コンクリート加工などにも広く使用されている。

[栗原久洲男]

種類

(1)穴あけ作業用 電気ドリル振動ドリル、ハンマードリルなどがある。コンクリート用の振動ドリルやハンマードリルは、回転する錐(きり)に上下方向の振動や打撃を加えて、穴あけの能率をあげている。建築用は錐のほかに、四角のほぞ穴用の角のみも普及している。(2)ねじ類の締め付け用 スクリュードライバー、ナットランナー、インパクトレンチなどがある。電動機を正・逆転させて締め付け、緩める。太いボルトなど強い力を要する作業には、反動が少なく能率のよいインパクトレンチが適している。(3)研削・研摩作業用 電気グラインダー、電気ディスクグラインダーなどがある。砥石(といし)を高速で回転させる、小型・軽量・高出力のディスクグラインダーが広く使用されている。金属の粗削り鋳物のばり取りや、石材用砥石をつけて石材の研摩にも用いる。研摩布紙またはバフを回転、あるいは平面内で振動させ、金属や木材の表面仕上げも行う。(4)切断用工具 鋸刃を用いる電気丸鋸、ジグソーバンドソー、薄い円板状の砥石やダイヤモンドホイールを用いる工具、チェーン状の刃をつけたチェーンソー、金属板切断用としてハンドシャー・ニブラなどがある。(5)切削用工具 木材、プラスチックの加工に限定される。木材の表面切削用の電気鉋、溝を切削する溝切り、角部の面取り用のトリマルーターがある。

 その他の工具としてコンクリート破砕用電気ハンマー、電気ブロワー、集塵(しゅうじん)機、攪拌(かくはん)機などがある。

[栗原久洲男]

現状と将来

現在、作業用、家庭用ともに電動工具の普及が著しいが、その主原因は工具の小型・高性能化である。(1)小型・軽量化 電動機は高速回転させれば出力が増し、一定出力ならば小型化される。技術の開発と加工精度の向上で、電動機の小型・高速化が実現した。さらに、アルミニウムにかわるポリカーボネート樹脂などの強力エンジニアリングプラスチックの使用で軽量化が促進されている。(2)エレクトロニクスの採用 マイコンを内蔵し、加工材料・刃物寸法などを指示すると、条件に適合した回転速度などを自動的に設定して作動するマイコンドリルなどが開発され、加工能率が向上している。(3)コードレス工具 商用電源から充電できるニッケルカドミウム電池などを応用して、50ワット程度の低出力のドリル、ドライバーなどが使われている。(4)家庭用工具 余暇の増加とともに家庭用電動工具の普及が著しい。家庭用には、電動機を内蔵した鉋、ドリル、サンダーなどの専用機と、電気ドリルを動力源として鉋、丸鋸などのアタッチメントを組み合わせる汎用(はんよう)機がある。(5)安全性の向上 感電防止は従来のアース方式だけでなく、電圧が印加されている充電部と人体が触れる金属部との間に、別種の絶縁体を二層にしたアース不要の二重絶縁構造も普及している。また、スイッチを切ると自動的にブレーキがかかり急停止する接触事故防止装置、集塵器付きの丸鋸やコンクリートカッター、防振構造のハンマードリルなどもある。

 電動工具は今後ますます小型・軽量化するとともに、自動制御、ワイヤレス化が進み、安全性と扱いやすさも増して、手持ち工具の主流となっていくと考えられる。

[栗原久洲男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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