日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子オルガン」の意味・わかりやすい解説
電子オルガン
でんしおるがん
electronic organ
元来は、パイプ・オルガンの音色や形態、操作性を模倣してつくられ、スピーカーによって音を出す電子(あるいは電気)鍵盤(けんばん)楽器をさすが、今日では演奏補助装置がくふうされた比較的小型のものが普及している。教会や劇場から一般家庭に至るまで用途はさまざまである。20世紀初めにつくられ始め、電磁誘導式のもの(ハモンド・オルガンHammond organ)や、リードの振動を電気振動にかえるもの(ワーリッツァー・オルガンWurlitzer organ)が初期の代表としてあげられる。
とくにハモンド・オルガンは、トーン・ホイール(金属製歯車)を電磁ピックアップのそばで回転させて正弦波電流を生じさせ、ドローバー(スライド式スイッチ)によって倍音を組み合わせて音色をつくるという独特な発音方式をとり、製造が中止されたいまなお、ロックやジャズの演奏家に、レスリー・スピーカー(回転式スピーカー)とともに愛用されている。
その一方で、電子工学技術の急速な発展は、真空管発振に端を発したトランジスタやICによる電子発振方式の発達を促した。1980年代には、従来のアナログ発振器にかわってデジタル音源が主流となり、それに伴ってレジストレーションのメモリーやMIDI(ミディ)機能による他の電子楽器との連動も可能になった。またシンセサイザー回路の導入により、プリセット型のポリフォニック・シンセサイザーとの区別が、いまや不明確になりつつある。
[由比邦子]