投票用紙に記入するのではなく、端末のタッチパネルに触れるなどして候補者を選び、投票する方式。米大統領選のほか、欧州でもベルギーやエストニアなどの国政選挙で導入されている。日本では2002年に電子投票の特例法が施行され、条例を制定した自治体が地方選挙に導入可能となった。開票時間短縮や人件費抑制が期待できる半面、03年7月の岐阜県可児市議選でシステムが一時停止し、最高裁で選挙無効が確定。信頼性への懸念などもあり、国政選挙には未導入。総務省によると、これまでに地方選で電子投票が実施されたのは計23回。(共同)
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選挙における開票事務の迅速・簡素化をはかるとともに、自書を不要とすることにより疑問票・無効票の減少を目的として、投票をコンピュータで行う方式。一般に、指定された投票所に赴いてタッチパネルで投票する第一段階から、どの投票所でも投票できる第二段階、そして個人のコンピュータで自宅でも投票できる第三段階まで考えられるが、日本では第一段階の導入が始まった。2001年(平成13)12月に制定された「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」(平成13年法律第147号。電子投票法)に基づいて、地方選挙に限って採用されている。日本で最初にこの方式が採用されたのは2002年6月に行われた岡山県新見(にいみ)市の市長選挙と市議会議員選挙においてであった。その後、2003年2月には広島市長選に際して安芸(あき)区が、同年4月の統一地方選挙では宮城県白石市議選で、また7月には福井県鯖江(さばえ)市議選でも採用された。有権者が自分の投票カードを電子投票機に差し込むと、画面に候補者の名前が表示され、目的の候補者名に触れると確認画面が出て確認ボタンを押すと投票完了となる。最初に採用した新見市の選挙では、開票作業自体がなく結果の集計にわずか25分しか要しなかったなど、時間や開票人件費の節約になる反面、不在者投票の増加や投票所機からのデータ搬送時のセキュリティの問題など課題は多い。
[辻山幸宣]
その後2004年までに10市町村で採用されたが、その多くは試験的運用にとどまり、全国的には広がらなかった。その原因としては、投票用紙方式よりも機器リース費用などのコストが圧倒的にかかることや、機器トラブルが発生したことで行われた裁判の結果、投票が無効になったことなどがあげられる。青森県六戸(ろくのへ)町が2018年に休止を決めたことで、国内で電子投票を実施する自治体はゼロになった。こうした状況を背景に、総務省に「投票環境の向上方策等に関する研究会」が設けられた。2018年8月にまとめられた報告では、これまでの投票専用機に加え、タブレット端末など汎用機の導入を検討することなどが盛り込まれた。
[編集部]
『横江公美著『Eポリティクス』(文春新書)』
(蒲島郁夫 東京大学教授 / 2007年)
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