翻訳|trolley bus
走行用のレールを必要としない鉄道車両。集電装置、駆動装置は従来の路面電車と同様であるが、車体、舵(かじ)取り機構、車輪などは自動車と同様である。法制上は軌道に準ずるものとして取り扱われるが、建設や運転については構造や機能が特殊なため、日本では無軌条電車建設規則および無軌条電車運転規則に定められている。
[松澤正二]
イギリスで1911年に初めて実用化され、アメリカで近代化された。日本で初めて本格的に走ったのは、1932年(昭和7)京都市の四条大宮と西大路四条間の1.6キロメートルである。その後1943年に名古屋市で運転されたが、これは路面交通の近代化からではなく、第二次世界大戦中のレールの不足から採用されたものである。
戦後は石油資源の乏しい日本の国情にふさわしい道路交通機関として運輸省(現、国土交通省)が発展と助成に努めた結果、1951年(昭和26)に川崎市、翌年には東京都、続いて大阪市で運転が開始された。しかし、1965年ごろから急速に発展普及した自動車交通の路面の占有と、とくにバス路線網の充実のため、路面電車とともに次々と廃止され、2023年(令和5)時点で、日本では立山黒部アルペンルートの大観峰(だいかんぽう)―室堂(むろどう)間に運行されているのみである。しかし、トロリーバスは環境に配慮した21世紀の新交通システムの一つとして、世界各地で注目されている。
[松澤正二]
トロリーバスは路面電車に比べて、(1)レールを敷設しないので建設費が約2分の1と安い、(2)道路整備状態にもよるが乗り心地がよい、(3)騒音が少ない、(4)レールに拘束されないので事故による停滞がない、(5)利用者は直接歩道から自由に乗降できるので、道路に設ける乗降設備が不要である、(6)保守費が比較的安い、などの利点が多いが、反面、(1)車両が路面電車より小さいので輸送単位が小さい、(2)運転室が片端なので、折り返し地点にループ状の特殊な架線設備が必要である、などの欠点もある。
バスと比べると、(1)エンジンの騒音がない、(2)排気ガスの公害・環境問題がない、(3)動力源として石油を直接使用しないので資源の節約ができる、などの利点がある。反面、(1)架線に拘束されるので運転の自由が制限される、(2)変電所、架線が必要なので建設費が高くなる、などの欠点もある。
[松澤正二]
『森五宏著『トロリーバスが街を変える』(2001・リック)』▽『吉川文夫著『日本のトロリーバス』(1994・電気車研究会)』
無軌条電車ともいう。車体はふつうのバスと同様であるが,路上の2本の架空線から車上のトロリーポールを用いて集電し,電動機によって走行するもの。タイヤで走行するので路面鉄道に比べて騒音は少なく,路上の軌道に拘束されないので走行上はある程度の自由度をもち,一方,ふつうのバスと比較した場合は,内燃機関を用いないので石油燃料を使わないですむと同時に大気汚染もないという長所をもっている。また,バスに比べれば車両費は高いが,軌道を用いないので全体の建設費は路面鉄道より安くつき,1910年ころから世界の多くの都市で採用された。しかし道路が自動車で極端に混雑すると,バスほどの自由度がないために走行がかなり不自由になるという欠陥はぬぐえず,日本では現在,扇沢~黒部ダム間の道路トンネル内の交通機関として用いられるだけとなった。外国の都市では現在でも用いているところがあり,車体にも2階式,連接式などが採用され,また新しい企てとしてドイツでは架線および車内の電池の2方式の電源を選択できるようにしたデュアルモード方式も使われている。
執筆者:八十島 義之助
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[路線]
1996年3月末現在で開業中の鉄道(JRを除く)は169事業者6885.9km,軌道は30事業者446.8km,合計181事業者7332.7kmある(うち18事業者は地方鉄道と軌道を併有)。この中には,特殊な構造を持つ鉄道として,鋼索鉄道(ケーブルカー)22事業者24.0km,懸垂式鉄道および跨座式(こざしき)鉄道(モノレール)6事業者31.4km,案内軌条式鉄道(ゴムタイヤ式のいわゆる新交通システムなど)8事業者79.1km,無軌条電車(トロリーバス)1事業者6.1kmが含まれている。このほか,普通索道(ロープウェー)が188線302.6km,甲種特殊索道(夏山リフト)が172線73.3km,乙種特殊索道(スキーリフト)が2770線1720.2km,丙種特殊索道(スキートー)が43線18.6kmある。…
※「トロリーバス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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