鉛化合物(読み)ナマリカゴウブツ

化学辞典 第2版 「鉛化合物」の解説

鉛化合物
ナマリカゴウブツ
lead compound

鉛の化合物には,酸化物,ハロゲン化物,硫化物,窒素化合物,酸素酸塩,有機酸塩のほかテトラアルキル鉛などの有機鉛化合物がある.通常,酸化数2で化合物をつくる.強酸化剤の存在下で酸化数4の化合物が得られる.一酸化鉛 PbOは密陀僧として中国古代から知られ,国宝玉虫厨子に黄色顔料として,またガラスの融剤としても紀元前から中国,エジプト,地中海沿岸で使用された.現在は,テレビのブラウン管(電子銃部分),電球・蛍光管の電極封入部や,集積回路絶縁層,プラズマディスプレイパネル(PDP)の発光画素隔壁にも高濃度PbOを含有するガラスが使用されている.光学ガラス,クリスタルガラスの高屈折率化成分としても以前から重要である.四酸化三鉛Pb3O4は,鉛丹光明丹として古くは漢方薬(仙薬)の成分に使われていた.現在でも,赤色顔料,さび止め塗料として使われている.炭酸水酸化鉛(塩基性炭酸塩)2PbCO3・Pb(OH)2は,天然に白鉛鉱として産出し,胡粉とよばれる.合成品の鉛白とともに白色顔料に使用される.わが国では,1935年に禁止されるまで白粉として使用され,鉛中毒は江戸・明治・大正期の役者の職業病の原因であった.クロム酸鉛PbCrO4は,道路標識用の黄色顔料として使われる.このほか,有色の鉛塩,ヨウ化鉛PbI2(黄色),硫化鉛PbS(黒色)は水に難溶性であり,無色または白色の塩化鉛PbCl2硫酸鉛PbSO4も溶解度は低い.酢酸鉛Pb(CH3COO)2(白色)は水に溶けるが,解離しない珍しい塩である.アンモニア,水酸化アルカリで水酸化鉛を沈殿するが,水酸化アルカリの過剰で徐々に亜鉛酸塩をつくって溶ける.四エチル鉛はアンチノック剤としてガソリンに添加されていたが,有毒性と触媒毒作用のため,わが国では1975年から,アメリカでは1986年から,EUでは2000年から使用が全面禁止された.「鉛化合物,ただし四酸化三鉛,ヒドロオキシ炭酸鉛(炭酸水酸化鉛),硫酸鉛を除く」は,「毒物及び劇物取締法」の劇物で,PRTR法・第一種化学物質,土壌汚染対策法・第二種特定有害物質に指定されている.RoHS指令による規制については鉛の項目を参照のこと.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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