改訂新版 世界大百科事典 「静電発電機」の意味・わかりやすい解説
静電発電機 (せいでんはつでんき)
electrostatic generator
コロナ放電や静電誘導などで発生させた電荷を,高電圧電極に運搬集積して高電圧を発生させる装置。1931年アメリカのバン・デ・グラーフR.J.Van de Graaffによって考案されたベルト発電機が代表的な例である。図に示すように針電極1に直流電圧Vを加え,接地した平板電極2との間でコロナ放電を発生させる。図はVが正の場合を示しているが,負なら負極性の高電圧が発生する。1~2間に絶縁物のベルトを置き,針先端のコロナ放電で生じた電荷をベルトに付着させる。ベルトの回転により電荷は高電圧電極内に運び込まれる。針電極3の放電によって電荷は高電圧電極の表面に蓄えられる。なお,実際にはベルトの帰り道で負電荷を運び出し電荷蓄積の速度を2倍にする。アメリカで製作された静電発電機の試験においては,直径4.6mの二つの球電極をそれぞれ地上7.3mに支持し,一方を正,他方を負に充電して電極間に約5000kVの高電圧を得た。今日では大型のものは六フッ化硫黄SF6ガスなどで絶縁し密閉形にする。
このほかに理科の教材などに用いられるウイムズハーストJ.Wimshurstの誘導起電機,気体や液体の流れを用いて電荷を運ぶ電気流体発電機electro-fluid dynamic power generator(EFD発電機ともいう)などがある。1800年に電池が発明されるまでは,大きなガラス球を摩擦して発生させた電荷を,ライデン瓶にためるなどの静電発電機が唯一の電気を発生する手段であった。
執筆者:河野 照哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報