日本大百科全書(ニッポニカ) 「鞨鼓」の意味・わかりやすい解説
鞨鼓
かっこ
雅楽の唐楽に用いる両面太鼓。「かっこ」は中国・日本の打楽器の名称で、広く羯鼓の字があてられるが、雅楽では鞨鼓と書くのが普通。長さ30センチメートル、口径15センチメートルほどの樽(たる)形の胴の両側に、直径約23センチメートルの鉄輪に張った皮を、皮面周囲の八つの孔に紐(ひも)を通して締め合わせたもの。この紐を大調(おおしらべ)、胴に巻いて大調を固定する紐を小調(こしらべ)といい、小調を左右に動かして音高を整える。本体を台にのせ、皮面を左右の桴(ばち)で打つが、その右の桴を雄(お)桴、左の桴を雌(め)桴という。奏法には、(1)拍の初めを雄桴で一度限り打つ「正(せい)」、(2)どちらかの片面を1拍目に1打、2拍目以後しだいに速く連打する「片来(かたらい)」、(3)左右両方の桴を交互に細かく打つ(トロトロと称す)「諸来(もろらい)」の3種がある。合奏ではこれらを組み合わせ、全体のテンポを先導する重要な役を担う。中国では唐代の玄宗(在位712~756)のころ重んじられたが、宋(そう)代以後急速に衰滅した。
また、能、狂言、歌舞伎(かぶき)には舞具としての小さな両面太鼓「羯鼓」があり、これを腰または胸につけて桴で打ちながら舞い、踊る。能では『花月(かげつ)』『望月(もちづき)』など、狂言では『鍋八撥(なべやつばち)』など、歌舞伎では『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』の「山づくし」や『鏡獅子(かがみじし)』の胡蝶(こちょう)の踊りなどにみられる。
[橋本曜子]