日本大百科全書(ニッポニカ) 「小児脳腫瘍」の意味・わかりやすい解説
小児脳腫瘍
しょうにのうしゅよう
小児にみられる脳腫瘍をいう。脳腫瘍は小児ではかならずしも少なくはなく、いわゆる小児癌(がん)(悪性新生物)の統計では白血病に次いで多い。乳児にはまれであるが、2歳以後ではどの年齢にもみられる。小児脳腫瘍の特徴は、成人に比べて、小脳や脳幹部(中脳、橋(きょう)、延髄)に多いこと、脳の中央部に発生するものが多いこと、などである。
脳腫瘍の症状は、一般には脳圧亢進(こうしん)による頭痛、嘔吐(おうと)、うっ血乳頭(眼底で乳頭部が境界不鮮明になる)であるが、小児とくに乳幼児では頭蓋(とうがい)骨の縫合が不十分なために、脳圧の亢進時に縫合が開くので症状として現れにくく、4歳以下ではむしろ頭囲の拡大をみることが多い。
腫瘍のある部位によって症状が異なり、逆に症状から腫瘍の部位を推定することができる。たとえば小脳腫瘍では、平衡障害のため歩行がふらついて上手にできなかったり、眼球の律動的運動が他覚的に容易に認められる眼球振盪(しんとう)のほか、首が傾斜したり、筋の緊張が低下したりする。脳の中央部の視床下部の腫瘍では、視力障害、視野狭窄(きょうさく)、意識障害のほか、けいれんをおこしたりする。
診断は、脳圧亢進症状、頑固な頭痛、嘔吐に注意し、神経症状がつねに進行性であるときは脳腫瘍を疑って精密検査をすべきである。検査法としては、脳波、超音波、CTスキャン、RI(ラジオ・アイソトープ)スキャン、血管写(血管造影法)など、腫瘍の場所や大きさの確定のため、患児になるべく苦痛を与えない方法で検査を進める。治療は、手術による腫瘍の除去が最良であるが、困難な場合は放射線療法を行う。
[山口規容子]