顕名主義(読み)ケンメイシュギ

デジタル大辞泉 「顕名主義」の意味・読み・例文・類語

けんめい‐しゅぎ【顕名主義】

代理人本人代理人に代理を委任した人)のために行う法律行為の効果を、本人に直接生じさせるためには、相手方に対して顕名をしていなければならない、という考え方。
[補説]例えば、BがAの代理人としてCと売買契約を締結する場合、「Aの代理人B」と署名することで顕名がなされる。ここで「B」と署名した場合、原則として、代理人が自己のためにCと契約を交わしたものとみなされる。ただし、BがAの代理人であることを、Cが知っているか、知り得る状況にあった場合は、顕名がなくても代理が成立する。民法は、原則として顕名主義をとるが、商行為については、商法の特則により、顕名がなくても本人に効果が生じる(非顕名主義)。顕名が必要となるのは、個人や非営利団体など非商人間の不動産取引や、結婚仲介、家庭教師斡旋あっせんなどの場合である。

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精選版 日本国語大辞典 「顕名主義」の意味・読み・例文・類語

けんめい‐しゅぎ【顕名主義】

〘名〙 代理人が代理行為を行なう場合に、本人のためにすることを示さなければならないとする主義。日本の民法はこの主義を採用している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「顕名主義」の意味・わかりやすい解説

顕名主義
けんめいしゅぎ

民法では,代理人が代理行為 (代理取引) をなし,その効果を本人に直接生じさせるためには,代理人は「本人のためにすることを示して」代理行為をしなければならない。これを顕名主義という (民法 99) 。たとえば,Aの代理人Bというように表示して代理行為をすることをいい,「本人の名において」と同義であるが,必ずしも本人の氏名を明示しなくても,周囲事情から本人がだれであるかを推知できればよいと解されている。民法上,顕名しないでなした代理人の行為は有効な代理行為ではなく,代理人自身のためになした行為とみなされる (民法 100) 。なお当事者の個性を重視しない商法では,商行為の代理について顕名主義をとらないが (商法 504) ,形式を重視する手形行為については顕名主義がとられている (手形法8,小切手法 11) 。

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