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手形行為 てがたこういWechselakt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

手形行為
てがたこうい
Wechselakt

手形上になされる法律行為。法定の方式を具備し署名または記名捺印を要件とする要式の書面行為。 (1) 為替手形については,振出し引受け裏書,保証,参加引受けの5種の手形行為が認められ,約束手形については,振出し,裏書,保証の3種の手形行為が認められている。実質的にみれば,いずれも手形上の債務負担に関係する行為であるといえる。 (2) 手形行為独立の原則 同一の手形面上になされた各個の手形行為がそれぞれ独立性を有し,他の手形行為の効力によって影響されないこと。たとえば,振出行為が意思無能力者によってなされても,その後の裏書は,振出しが無効であるにもかかわらず手形行為としては有効とされる。この原則は,前提となる手形行為が実質的無効である場合 (意思無能力者の手形行為,手形行為無能力者の手形行為が取消されたとき,偽造の署名など) に適用され,手形要件の欠缺による形式的無効の場合には適用されない (手形法7,77条2項,小切手法 10) 。

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世界大百科事典 第2版の解説

てがたこうい【手形行為】

形式的には,手形において,署名を要件とする要式の書面行為。振出し裏書引受け保証および参加引受けの5種があり(約束手形には引受け,参加引受けはない),振出しを基本的手形行為,他の4種を付属的手形行為という。実質的には,手形上の債務の負担を目的とする法律行為とするのが伝統的な定義である。しかし,裏書は権利の移転を,また為替手形の振出しは支払の委託を,それぞれ意思表示の内容とするものであって,それらの行為者に償還義務(〈遡求権〉の項参照)が生ずるのは法定の効果にすぎないとみる立場からは,各種の手形行為を実質的内容の点で一元的に定義することはできない。

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大辞林 第三版の解説

てがたこうい【手形行為】

手形上の債務を発生・変動させる法律行為。為替手形の振出・裏書・引受・保証・参加引受、約束手形の振出・裏書・保証をいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

手形行為
てがたこうい

手形上になされる法律行為のことで、為替(かわせ)手形については手形の振出し(手形の発行)・裏書(証券上の権利者がその証券に所要事項を記載して署名し、これを相手方に交付すること)・引受け(支払人が手形金額の支払義務を負担すること)・保証(手形保証、手形債務者の債務を他者が手形上で保証すること)・参加引受け(手形の満期前に引受拒絶などの遡求(そきゅう)原因が生じた際、遡求を阻止するために引受人以外の第三者が引受人と同一の義務を負担すること)の5種があり、約束手形については振出し・裏書・保証の3種がある。このうち、振出しはいわば手形を創造する行為であるから、これを基本的手形行為といい、ほかの4種は、振出しによって作成された基本手形の存在を前提としてなされるから、これを付属的手形行為という。いずれも、署名または記名捺印(なついん)を要件とする要式の書面行為である。手形行為の本質については学説の対立があり、通説は手形上の債務負担を目的とする法律行為と解しているが、手形行為を手形債務負担行為と権利移転行為とに分けて二元的に構成する見解も有力である。
 手形行為が成立するためには、手形証券の作成だけで十分であるのか、手形の交付行為も必要であるのかにつき、「手形理論」の問題として論ぜられている。たとえば、Aが作成した手形を受取人に交付前にBが盗取し、これを善意者Cに譲渡した場合に、Aが手形債務を負担しCに支払いをしなければならないかにつき、契約説は、手形行為は手形の授受によりなされる契約であるから、Aは証券の交付をしていない以上手形行為は成立せず、したがってAは手形債務を負担しないと解する。これに対し、創造説は、手形の作成だけで手形債務が発生すると解するから、Aは当然Cに対し支払わなければならないことになる。もっとも、契約説によっても、署名された手形が第三者Cに譲渡されれば、外観上、交付契約があったとの表見的事実が存在するので、署名者は証券の交付がなくても手形債務を負うと解すべきであるとして(権利外観理論)、結果的に創造説と同じく、善意者の保護が図られている。なお、手形行為を債務負担行為と権利移転行為に分けて二元的に構成する見解によれば、債務負担については創造説によりAの手形上の責任を肯定したうえで、手形上の権利の移転については相手方との交付契約を要すると解するから、Bについては交付契約がない以上、手形上の権利はBに移転しないが、Cについては、善意取得によりAの手形責任を認めることになる。
 手形行為は法律行為の一種であるが、手形の流通性を保護するために、手形行為独立の原則が認められている。すなわち、同一の手形上になされた手形行為はそれぞれ独立的にその効力を生じ、ある手形行為が実質的に無効(たとえば制限行為能力者による手形の振出しが取り消された場合や手形の偽造など)であっても、そのためにほかの手形行為の効力になんら影響を及ぼさない。また、手形行為についても、能力・意思表示・代理などに関する民法の一般原則が適用されるが、手形の流通性保護のために、若干の修正が加えられることもある。[戸田修三]

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