顰・蹙(読み)しかむ

精選版 日本国語大辞典 「顰・蹙」の意味・読み・例文・類語

しか・む【顰・蹙】

[1] 〘自マ四〙
① 顔や額にしわが寄る。しぶい顔つきになる。しわむ。
史記抄(1477)一二「蹙(しくあつ)は鼻と眉とがあつまってしかうたぞ」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉血書「四辺なる男等の蹙(しか)みたる顔付を見るに及びては」
② (「しがむ」とも) 事態の進む方向や人のきげんなどが好ましくない方に変わる。
※土井本周易抄(1477)五「世界のかかる時分、民のしがうた時に独り正ければ危ぞ」
衣類、紙などがしわになる。
御伽草子・鼠の草子(古典文庫所収)(室町中)「いづこよりとも、おぼえぬに、なへしかみたる、かり衣姿なる男」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒しかめる(顰)

しかみ【顰・蹙】

〘名〙 (動詞「しかむ(顰)」の連用形の名詞化)
① しかめること。しかめ面(つら)をすること。
浮世草子・風流曲三味線(1706)四「色粧(つく)る身の顔に、しかみも付られず」
② 模様や細工物などで、獅子(しし)の面や鬼の面などのしかめたもの。
能面の一つ。眉をよせ、牙(きば)をむき出した恐ろしい形相の鬼の面。「紅葉狩」「大江山」「羅生門」などの後ジテに用いる。〔能口伝之聞書(1598)〕
④ 日本建築で、木鼻などの刳形(くりかた)のしゃくれた部分。〔紙上蜃気(1758)〕

しか・める【顰・蹙】

〘他マ下一〙 しか・む 〘他マ下二〙 顔や額にしわを寄せて、渋面を作る。苦痛、不愉快の気持を顔に現わす。
日葡辞書(1603‐04)「ハナヲ、または、カヲヲ xicamuru(シカムル)

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