改訂新版 世界大百科事典 「飛程」の意味・わかりやすい解説
飛程 (ひてい)
range
電子線やα線など電荷をもった粒子放射線が物質中に入射すると,入射粒子は,非常にエネルギーの大きい場合,制動放射と呼ばれる放射線を発生してエネルギーを失う過程も無視できないが,通常は主として物質中の電子と相互作用してエネルギーを失いながら進む。質量の大きいα粒子や陽子は物質中の道筋がほぼ一直線になるが,軽い電子では散乱を受けて曲がった道筋となる。荷電粒子が物質に入射してからその運動エネルギーを失うまで物質中を走った直線距離を飛程という。飛程の大きさは入射粒子の種類と運動エネルギーおよび入射する物質によって決まるが,α粒子や陽子の飛程は電子線に比べてはるかに短い。例えば2×106eVのα粒子の水中の飛程は50μm程度であるが,同じエネルギーの電子線の場合は8mmほどである。
執筆者:石榑 顕吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報