飛跡(読み)ヒセキ(その他表記)track

翻訳|track

デジタル大辞泉 「飛跡」の意味・読み・例文・類語

ひ‐せき【飛跡】

霧箱泡箱原子核乾板などで観測される、荷電粒子が通過した跡。

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精選版 日本国語大辞典 「飛跡」の意味・読み・例文・類語

ひ‐せき【飛跡】

  1. 〘 名詞 〙 帯電粒子が通過した跡。ウィルソンの霧箱・泡箱・原子力乾板などでα粒子や電子などの走った跡にできたイオン水滴気泡または感光した銀粒子の列として観測されるもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「飛跡」の意味・わかりやすい解説

飛跡 (ひせき)
track

原子乾板,霧箱,泡箱などに荷電粒子が入射したとき,粒子の電離作用によって粒子の通った場所にできる可視の進路の跡。飛跡は荷電粒子の足跡ともいえ,粒子の存在の検出はもとより,その識別などに手がかりを与える。泡箱の場合を例にとれば,外部磁場を泡箱にかけたときの飛跡の曲り方から電荷正負が,また曲率より粒子の運動量が得られる。さらに単位長内の泡の数は粒子が単位長内で失うエネルギーと関連し,おおよそ粒子の速度vと光速cの比v/cの2乗に反比例することが知られているので,ある運動量領域では泡の密度より粒子の識別も可能となる。また,マルチワイヤ・プロポーショナル・チェンバーなど比例計数管原理を応用した多数の電極から成り立つ検出器では,荷電粒子により電離された電子を検出することにより,電気信号で粒子の通過位置を決めることができる。この場合の飛跡は可視ではないが,信号をコンピューターで処理してグラフィックディスプレーなどで可視化することもできる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「飛跡」の意味・わかりやすい解説

飛跡
ひせき
track

物質中を高速の荷電粒子が通った経路に沿って生じた眼に見える痕跡霧箱内では荷電粒子がつくるイオンを核として霧滴の列を生じ,泡箱内では同様に気泡の列を生じる。スパークチェンバーではイオンが引き金の役目をして放電の光点の列となる。原子核乾板では荷電粒子はハロゲン化銀を励起し,現像後に銀粒子の列となる。金属以外の固体中で,電離作用の大きい荷電粒子はその原子配列を乱し,適当な薬品で腐食させると孔を生じる。これらの装置は飛跡検出器と呼ばれる。飛跡の形,長さ,単位長さあたりのイオン数,磁場中の飛跡の曲率,および散乱による飛跡の微小な曲りなどから,粒子の種類,エネルギーを知ることができる。

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百科事典マイペディア 「飛跡」の意味・わかりやすい解説

飛跡【ひせき】

放射線宇宙線等の高エネルギー荷電粒子が霧箱泡箱原子核乾板等を通過したあと観測される軌道。飛跡の長さ,濃さ,磁場による曲りなどから粒子の種類,質量,電荷の正負,エネルギーなどがわかる。
→関連項目α線

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化学辞典 第2版 「飛跡」の解説

飛跡
ヒセキ
track

[同義異語]トラック

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