飛膜(読み)ヒマク

デジタル大辞泉 「飛膜」の意味・読み・例文・類語

ひ‐まく【飛膜】

鳥以外の陸生脊椎動物滑空飛行をするための皮膚ひだコウモリムササビヒヨケザルなどにみられ、前肢体側後肢にかけて膜状発達

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精選版 日本国語大辞典 「飛膜」の意味・読み・例文・類語

ひ‐まく【飛膜】

〘名〙 鳥類を除いたコウモリ、ムササビ、トビトカゲなどの陸生脊椎動物の滑空ないし飛行に用いる特殊化した皮膚。主に前肢、体側、後肢にかけて膜状に張られている。翼膜。

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改訂新版 世界大百科事典 「飛膜」の意味・わかりやすい解説

飛膜 (ひまく)

脊椎動物が飛翔(ひしよう)したり滑空するとき,広げて使う皮膚の膜で,ふつう前肢から後肢,さらに後肢から尾にかけて張られる。真の飛翔に役だつのはコウモリと絶滅した翼竜プテラノドンなど)の飛膜flying membraneで,翼竜では前足の第4指が長く伸び,そこから後肢にかけて膜が張られるが,コウモリでは前足の第2~第5指が長く伸び,それらの間,および第5指と後肢,さらに後肢と尾の間に膜が発達する。コウモリの飛膜は,薄い2層の皮膚からなるゴム状の膜で,その間には膜を縮める筋肉があり,使わないときは膜を小さく折りたたむことができる。再生力が強く,枝などに突き刺して穴が開いても,たいてい完全に治癒する。滑空するものの飛膜gliding membraneは,ヒヨケザル,ムササビ,モモンガウロコオリスフクロモモンガなどの哺乳類に見られ,ふつう前肢の手根部から後肢の足根部まで,体側の皮膚が伸びて形成される。ヒヨケザルではさらに,後肢から尾の先端まで張られた尾膜がある。ムササビとモモンガでは,前肢の手根部からは手根骨の一つが長く伸びて飛膜を支え,その面積を大きくするのに役だつ。トビトカゲの飛膜はこれらと異なり,体側にうちわ状に突き出ていて,5~7対の肋骨が長く伸びてそれを支え,自由に開閉できる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛膜」の意味・わかりやすい解説

飛膜
ひまく

鳥類を除く陸生脊椎(せきつい)動物にみられる、滑空あるいは飛行のために使われる膜状構造をいい、皮膚のひだとして発達した。滑空のための飛膜は哺乳(ほにゅう)類のムササビやモモンガ、ヒヨケザルなどにみられる。四肢と体側の間に皮膜があり、これで滑空し、尾によって方向を変えることもできる。コウモリの仲間の飛膜は、長く伸びた指骨と四肢、体側の間に張られていて、鳥の翼のように羽ばたいて飛ぶことができる。後肢と尾の間の膜が方向舵(だ)の働きをする。トビトカゲにも飛膜とよばれる構造が体側にあるが、これは体側に張り出した肋骨(ろっこつ)をつなぐ皮膚のひだであり、四肢とはつながっていない。

[和田 勝]


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